第8話

文字数 678文字

       8

 ロスタイムに突入した。天馬の勝ち越しゴールでバルサは完全に流れを掴み、押せ押せの展開だった。
 敵の7番が零れ球を拾った。場所はセンターからややバルサ陣地側だった。
 審判がちらりと時計を見た。試合終了は近かった。
 7番がパスを出した。ゴロのボールが、バルサ守備陣の間を通過する。
「キーパー!」神白は叫んで飛び出した。詰めて来る8番より先に到達し、足の内側で前に出す。
 瞬時に前を見た。レオンが空いていた。神白はすかさずパスを転がす。
 受けたレオンはくるりと反転。右前の9番に出して、猛然と上がり始める。
 9番はダイレクトで真横の7番へ。7番も止めずに斜め前に出す。
 鮮やかなワンツーでディフェンスを躱し、9番は縦にドリブルする。
 敵2番がフォローに来た。9番はストップし、踵で後方に出した。狙いは真後ろのレオンだ。
 レオン、ゴール前を確認し右足でパス。内巻きのボールが守備の隙間を抜けた。
「3点目のチャンスっすね!」貪欲に吠えた天馬が追い付いた。キックのモーションに入るが、敵3番が遅れてスライディングを掛ける。
 天馬、スイングを急停止。シュートと見せかけて、左足で真横に転がした。
 反応したのはレオンだ。終了間際とは思えないスピードで駆け寄っていく。5番が追いつつ肩でぶつかるがびくともしない。
 レオンはボールに到達した。左足を振り被る。
 一瞬ののちに、凄まじい速度のシュートが放たれた。
 ボール右隅に飛んだ。ネットを揺らした。キーパーは一歩も動けなかった。
 三対一。バルサ、ダメ押しの追加点だった。
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