第9話

文字数 779文字

       9

 前半も十分強を消化した。スコアには動きはない。アリウムのマンマークと暁のフォローで攻撃の要、オルフィノはどうにか抑えられていた。だが攻撃面も、ルアレ守備陣の能力の高さに封じ込まれ気味だった。
 ボール保持者、ルアレ中盤の8番が前を向いた。パスを受けるべくオルフィノが下がっていく。
 すかさずアリウムが追う。だがオルフィノは囮。8番はアリウムのいたところにボールを転がした。
 7番が受けた。バルサ5番が後ろから足を削るが、堪えて右サイドにパスを出す。
 モンドラゴンがトラップした。位置はセンター・サークルの端だった。
(モンドラゴンの定位置は右サイドだ。だけど、ボールが逆サイドにある場合は、中に絞ってミッドフィルダーに近い役割をしている。新戦術だ。俯瞰できる俺がしっかり解析しないと、敵の狙い通りにやられるな)
 神白は冷静に分析を進めていた。一方のモンドラゴンは、右足をテイクバックした。
 モンドラゴンが蹴った。ふわりとしたボールが飛び、敵9番が走り寄る。
「キーパー!」9番に従いていくバルサ6番に叫んで、神白は飛び出した。自分が前に出て処理するという意思表示だ。
 しかしモンドラゴンのフィードは、水たまりの上に落ちた。ぱしゃりと音を立てたのち、ボールが急加速する。
(なっ!)神白は驚嘆しながら駆け出した。ボールは転々と進んで、ゴールへ向かっていく。
 神白は跳んだ。片手を伸ばした。どうにかボールに掌が至り、ライン上で留めることに成功した。
 間髪入れずに神白は地を蹴った。低姿勢のまま加速し、今度は両手でボールを確保する。
 立ち上がった神白はモンドラゴンに視線を向ける。
(ボールがスリップする水たまりを狙って……。わかっちゃあいたが、恐ろしい技量だな)
 神白は戦慄しつつ、レオンを目掛けてパントキックを放った。
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