0 Dear wonderful world

文字数 404文字

 二度寝を覚ましてくれたのは、スマホの二度目のアラームだった。
 まずアラームを解除する。そして椅子から立ち上がり、保温状態の炊飯器から飯をよそった。続いて鍋から味噌汁を椀によそい、それら朝食を机に置いて手を合わせる。
 家には俺一人を置いて、誰もいない。あれだけ帰りを喜んでくれた親も、忙しなく家を出て行った。行儀が悪いのを承知で、リモコンを操作してテレビをつける。情報番組では、もうすぐ行われる選挙に向けた内容が流れている。

 俺は再びリモコンを操作し、テレビを消した。それから無音のまま朝食を摂った。行儀の面で我に返ったのではなく、内容がつまらなかったわけでもない。ただ、俺は党首討論や演説をする政治家たちの姿を見て、あることを思い出しただけだ。
 ――今から数十日ほど前に始まった、俺の旅。それをゆっくり思い出したかった。此岸(この世)彼岸(異世界)を結んだ旅路はいつから始まっただろう。まずは、始まりから思い出してみよう――
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