第26話 妻との面会
文字数 615文字
病室に行くと、ひとり部屋の静かな空気に溶け込むように、早紀は目を閉じていた。そばまで歩み寄りその顔を見つめた。意識が戻ったらなんと伝えればいいのだろう。
すみれとの対面を終え病室で少し休んだ。その間に考えを巡らせたが、言葉は堂々巡りをするばかりで伝えるべき姿を現すことはなかった。
すみれが死んだことを早紀は噛み砕き、受け入れるだろうか。その葬儀にすら出られないことを納得するだろうか。
窓の外は先ほどまでちらついていた雪が止み、濃淡を織り交ぜた灰色の空が広がっていた。
「あなた」妻の声に鳴海は不意を喰らった。
「ごめんなさい。あたしのせいで」
「いや、無事で何よりだよ」
「すみれはまだ治療中だそうです。まだ子供だから急激な加療はできないらしくて、時間がかかるそうです。様子を見に行くことはできるのかしら」早紀の声はか細く、その頬はやつれたように見えた。
「先生に訊いてみよう。それより体調はどうだい?」
「ええ、頭が重いけど大丈夫。あたしが会いに行っていいかどうかも訊いてください。意識が戻っていたらかわいそうだから、早く会いに行ってあげなくちゃ。あの子」早紀が窓の外に頭を向けた。
「あなたに似て寂しがりやだから」
言い終わるやいなや、妻は意識を失うように眠りに就いた。後遺症が残らないことを祈るだけだった。
すみれとの対面を終え病室で少し休んだ。その間に考えを巡らせたが、言葉は堂々巡りをするばかりで伝えるべき姿を現すことはなかった。
すみれが死んだことを早紀は噛み砕き、受け入れるだろうか。その葬儀にすら出られないことを納得するだろうか。
窓の外は先ほどまでちらついていた雪が止み、濃淡を織り交ぜた灰色の空が広がっていた。
「あなた」妻の声に鳴海は不意を喰らった。
「ごめんなさい。あたしのせいで」
「いや、無事で何よりだよ」
「すみれはまだ治療中だそうです。まだ子供だから急激な加療はできないらしくて、時間がかかるそうです。様子を見に行くことはできるのかしら」早紀の声はか細く、その頬はやつれたように見えた。
「先生に訊いてみよう。それより体調はどうだい?」
「ええ、頭が重いけど大丈夫。あたしが会いに行っていいかどうかも訊いてください。意識が戻っていたらかわいそうだから、早く会いに行ってあげなくちゃ。あの子」早紀が窓の外に頭を向けた。
「あなたに似て寂しがりやだから」
言い終わるやいなや、妻は意識を失うように眠りに就いた。後遺症が残らないことを祈るだけだった。