第7話 妻子の異変

文字数 564文字

 保育園に通じる道路へ右ハンドルを切った。念のためにこの道路も確認しておかなければならない。保育園が見えたところで車を止め、携帯電話を取り出した。

「いえ、すみれちゃんはまだ来てません」保育士の心配げな声が聞こえた。

 鳴海は車を発進させた。鼓動の音が耳の奥でうるさく鳴った。ハンドルにしがみつくように前傾姿勢をとり、自宅への道をひた走った。

 駐車場に止まっているスバルのフォレスターが見えた。よかった事故じゃなかったんだ。鳴海はアウトバックを止めて車外にまろび出た。うっすらと雪の降り積もった車にはエンジンがかかっている。



 ワイパーでも故障したか。あるいはウィンドウォッシャー液が切れたか。しかし、時間が経ちすぎている。それに携帯に──その事実に息が乱れる。

 応答はなかったのだ。

 駆け寄った車内に見えたのはシートベルトを肩に掛けたまま(くずお)れている妻と、チャイルドシートの娘だった。119番を押す指が震えた。

「高圧酸素の治療をしていますが奥様はまだ意識不明です。お子様は非常に危険な状態です」

 マフラーに雪が詰まったことによる一酸化炭素中毒だった。ゆらりと景色が上昇した。
「鳴海さん大丈夫ですか!?
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み