第28話 なでしこ隊
文字数 661文字
昭和20年3月27日早朝、佐智たち18人の女学生は、夜も明けきらぬうちに電話で学校に集められ、事情も知らされず知覧飛行場に向かった。佐智は知覧高等女学校の三年生に進級する寸前の春、15歳だった。
その日は正門からではなく、飛行場を迂回するように、松や檜、竹林の中を進み、飛行場の奥に着いた。
そこに並んでいたのが、敵機から姿を隠すようにひっそりと建っている半地下式の三角兵舎だった。
それはまるで、崩れて屋根だけが残った粗末な家のようにも見えた。その屋根には偽装の杉の幼木が被せられていた。
そこで将校の訓辞があった。
「知覧飛行場は特攻基地となった。今日からみなさんには、特攻兵士たちの身のまわりのお世話をしてもらいます」
特攻のことは新聞で読んで知っていたが、この知覧飛行場が特攻基地になるなどとは、誰しも考えてもみなかった。息を呑み、お互いに顔を見合わせた。それぞれが驚きの表情を浮かべていた。
半地下に屋根を付けただけの、けっして広くはない三角兵舎に、特攻するまでの数日間を16人が暮らした。そのひとつの兵舎を、それぞれ3.4人が担当して、掃除、洗濯、ご飯運びなどの世話をした。
特攻兵たちの寝具は、わら布団に毛布だけの粗末なものだった。これがお国のために命を捧げる人たちの最後の暮らしなのかと、申し訳なささえ感じた。
軍人でも軍属でもなかったが、佐智たちは、自らを『なでしこ隊』と名づけた。
その日は正門からではなく、飛行場を迂回するように、松や檜、竹林の中を進み、飛行場の奥に着いた。
そこに並んでいたのが、敵機から姿を隠すようにひっそりと建っている半地下式の三角兵舎だった。
それはまるで、崩れて屋根だけが残った粗末な家のようにも見えた。その屋根には偽装の杉の幼木が被せられていた。
そこで将校の訓辞があった。
「知覧飛行場は特攻基地となった。今日からみなさんには、特攻兵士たちの身のまわりのお世話をしてもらいます」
特攻のことは新聞で読んで知っていたが、この知覧飛行場が特攻基地になるなどとは、誰しも考えてもみなかった。息を呑み、お互いに顔を見合わせた。それぞれが驚きの表情を浮かべていた。
半地下に屋根を付けただけの、けっして広くはない三角兵舎に、特攻するまでの数日間を16人が暮らした。そのひとつの兵舎を、それぞれ3.4人が担当して、掃除、洗濯、ご飯運びなどの世話をした。
特攻兵たちの寝具は、わら布団に毛布だけの粗末なものだった。これがお国のために命を捧げる人たちの最後の暮らしなのかと、申し訳なささえ感じた。
軍人でも軍属でもなかったが、佐智たちは、自らを『なでしこ隊』と名づけた。