第43話 グラマン撃墜

文字数 727文字

 鳴海はアクリル製の風防天蓋を開けた。瞬間、操縦席に風が巻き込む。

 重い機体に引っ張られるように急旋回した隼は、上昇してくるグラマンめがけて降下した。体にかかるGで血流がままならないことが分かる。照準器を覗き込み狙いを定める。距離はおよそ100m。



 カタカタカタカタッ!
 機銃が立て続けに撃ち出される。零戦の20mm弾に劣るものの、隼の鼻先から発射された12.7mm弾を浴びた2機のグラマンはすれ違いざま黒煙を上げた。



 250キロ爆弾を抱えて、当時最速、最強を誇ったグラマンとやり合うとは、やはり杉浦という男、優れたパイロットだ。

 沖縄本島に近づくにつれ、雲の狭間から見える敵艦船の多さに驚かされる。もちろんお互いの高射砲や機関砲の射程外を維持してはいるのだろうが、海を埋め尽くすかのようだ。

 外側を守るように配置されているのは、現在のイージス艦にあたるレーダーを積んだピケット艦だ。

 迎撃機の飛んでくる速さから見て、とうの昔に特攻機は捕捉されている。だからこそ、あれほど早くグラマンが飛んできたのだ。

 杉浦はそれを分かっているだろうか。頭の片隅で鳴海は思った。まるで多重人格者にでもなったような気分だった。

 ピケット艦に向け、急降下で特攻を仕掛ける戦闘機が見える。まだだ。隼は先を目指した。血が騒ぐのか、機体トラブルで飛行は無理だと諦めたのか、護衛機でありながら、特攻を仕掛ける機も見えた。

 やがてひときわ大きい艦船が前方に近づいてきた。
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