第42話 隼上昇
文字数 1,092文字
特攻機がおよそ110機、掩護 の戦闘機が60機、しかし特攻機の何機かは、機体トラブルで引き返した。
悪天候により、沖縄を目指した特攻機が進発基地に戻ることは珍しくはなかったが、今日は天候に恵まれた。
第二次総攻撃の最終日。各地の飛行場から陸海軍の特攻機が集まってきていた。相当消耗したのか、あるいは温存か、海軍の神風には零戦が見あたらない。
特攻の機種は様々だ。2枚プロペラに下駄履きの九七式もあれば、隼もある。三式戦闘機『飛燕 』、百式司偵(百式司令部偵察機)ともに隼の速度を超えている。
三式戦闘機『飛燕 』
さらに、最高速度624km/hという四式戦闘機『疾風』は実用化された日本製戦闘機の中では最速だった。隼より100m/hも速い。
隼の前方を、車輪を突き出したまま飛んでいる飛行機が見える。九九襲(九十九式襲撃機)だ。パイロットと偵察員の二人乗りの機には、律儀に二人が乗っている。
優れた機体ではあったが、すでに時代に置き去りにされた脚部を収納できない下駄履きの飛行機だったため、特攻の主力機となった。
隼の機首と回るプロペラの先に、白い雲を散らす青い海が広がっている。やがて水平線の彼方に島影が見え隠れする。直接護衛機のパイロットが大きな仕草で前方を指さす。あれが沖縄だと。
掩護機のパイロットをしていた杉浦にとっては珍しい景色でもないだろうが、鳴海は初めて目にするものだった。
突入路を開く間接支援機はすでに先行している。
護衛の戦闘機がスピードを上げて飛び去っていく。先行の戦闘機が撃墜できなかった迎撃機が向かってきたのだ。
はるか先で、戦闘機が舞い乱れる。迎撃機の群れと護衛の戦闘機の空中戦が繰り広げられる。
四式戦闘機『疾風』
掩護 機が撃墜できなかったグラマンが数機飛んでくる。その後を掩護機が追う。こっちは重い爆弾を積んでいて動きが鈍い。黒煙と炎を上げて撃墜されていく特攻機も見える。
「おあいにくさま。この隼はちゃんと撃てるんだよ」操縦桿を引き、隼は上昇を始めた。
特攻機は、武装と防弾板を取り外した機も多かったが、杉浦はそれを拒んだのだろう。彼の戦闘機乗りとしての戦歴がそれを可能にしたのかもしれない。
悪天候により、沖縄を目指した特攻機が進発基地に戻ることは珍しくはなかったが、今日は天候に恵まれた。
第二次総攻撃の最終日。各地の飛行場から陸海軍の特攻機が集まってきていた。相当消耗したのか、あるいは温存か、海軍の神風には零戦が見あたらない。
特攻の機種は様々だ。2枚プロペラに下駄履きの九七式もあれば、隼もある。三式戦闘機『
三式戦闘機『
さらに、最高速度624km/hという四式戦闘機『疾風』は実用化された日本製戦闘機の中では最速だった。隼より100m/hも速い。
隼の前方を、車輪を突き出したまま飛んでいる飛行機が見える。九九襲(九十九式襲撃機)だ。パイロットと偵察員の二人乗りの機には、律儀に二人が乗っている。
優れた機体ではあったが、すでに時代に置き去りにされた脚部を収納できない下駄履きの飛行機だったため、特攻の主力機となった。
隼の機首と回るプロペラの先に、白い雲を散らす青い海が広がっている。やがて水平線の彼方に島影が見え隠れする。直接護衛機のパイロットが大きな仕草で前方を指さす。あれが沖縄だと。
掩護機のパイロットをしていた杉浦にとっては珍しい景色でもないだろうが、鳴海は初めて目にするものだった。
突入路を開く間接支援機はすでに先行している。
護衛の戦闘機がスピードを上げて飛び去っていく。先行の戦闘機が撃墜できなかった迎撃機が向かってきたのだ。
はるか先で、戦闘機が舞い乱れる。迎撃機の群れと護衛の戦闘機の空中戦が繰り広げられる。
四式戦闘機『疾風』
「おあいにくさま。この隼はちゃんと撃てるんだよ」操縦桿を引き、隼は上昇を始めた。
特攻機は、武装と防弾板を取り外した機も多かったが、杉浦はそれを拒んだのだろう。彼の戦闘機乗りとしての戦歴がそれを可能にしたのかもしれない。