第14話 コードネーム

文字数 663文字

 格闘戦や旋回戦に入ったら一巻の終わり。格闘戦を試みるのは死にに行くのと同然。
 連合軍の戦闘機操縦者に恐れられ、格闘性能では零戦を上回ったとも言われる無敵の隼も、この時期は敵国の戦闘機の性能には及ばなくなっていた。武装は大口径20㎜砲を搭載した零戦に比べ12.7mmの機関銃2門のみであり、最高速度515km/hの速度と非力な火力では撃墜がむずかしくなっていったのだ。



 開戦時、陸軍の主力戦闘機は最高速度460km/hの九七戦だった。曲芸飛行が可能なほどの旋回性能を持つ戦闘機で、その優れた操縦性を保ちながらも、時速500キロ以上のスピードという、無茶な条件を突きつけられて出来上がったのが隼だった。

 操縦性と速度、二兎を追った軽量化のための犠牲は機体にも及んだ。その(もろ)さを見抜かれてからは、敵機は戦闘を避け急降下で逃れた。隼で深追いすれば、翼の振動が加速度的に増すフラッター現象で翼がもぎ取られ、空中分解を起こすからだ。それでもなお、その加速力と旋回性能は威力を持っていた。

 鳴海はふと疑問を抱いた。これを考えているのは鳴海修作だろうか、それとも杉浦という人物だろうかと。

 零戦と隼がなければ、日本はもっと惨めな負け戦になっただろうとさえ言われる。陸軍初の引き込み脚の戦闘機。海軍の零戦に比べ華奢(きゃしゃ)な姿だったが、初期の頃は連合軍に零戦と誤認された。
 連合軍のコードネームはOscar(オスカー)
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