第31話 植民地支配

エピソード文字数 1,146文字

「あの日露戦争でロシアに勝ち、有色人種を救った。あれがなければ、有色人種は世界の奴隷であり続けただろう」
「世界の奴隷?……」



「そうだ。世界の陸地のほとんどは白人が支配している。有色人種は白人の植民地支配を受けていたわけだ。彼らは有色人種など豚や馬と同じで、我々白人に飼育されているのが当然などと公言してはばからなかった。
 そこに、あろうことか数少ない有色人種の独立国家日本が、強大なロシア帝国に戦いを挑んだんだ。
 最終的にはアメリカの仲介を受けた形ではあったけれど、勝った。これが有色人種に勇気を与え、全世界の植民地による独立運動に繋がっていった」

「そげんこっやったんですか。ではないごて日露戦争は起こったとな」
 目を丸くして興味を持ったことに、杉浦さんは嬉しそうに微笑んだ。こんな話なんて聞いたことがない。父も母もじいちゃんも教えてはくれなかった。



「当時、ヨーロッパをはじめとする列強が、世界を植民地支配するのは当たり前のことだった。朝鮮半島を支配していた韓王国も危険にさらされていた。軍事力も経済力も遅れていた韓王国が保たれていたのは、清大国(中国)の属国だったからだ。
 その清大国も、白人勢力に多くの領土を浸食され、半植民地と言ってもいい状態になっていった。
 日本に最も近い朝鮮半島をフランスやロシアやドイツ、いずれにせよ白人の植民地にされてしまったら、日本の独立が危険な状態に陥り、やがて植民地化される恐れがある」
「ほんのこて、そうです」早紀は大きく頷いた。

「特にロシアは不凍港を求めて南下政策をとっていた。それが実現したら喉元に匕首(あいくち)を突きつけられるに等しい。
 何で日本がそこまで強くなったのかといえば、運がよかったからだ。日本の植民地化を狙っていた列強が睨み合いをしている間に、富国強兵を行ったからだよ」
「色々あってん戦争やったんじゃなあ」

「佐智さん、この戦争が、大国が小国を武力と金で支配する、領土拡張と資源獲得の最後の戦いになるはずだ」
「やっぱい、負くっとですね……」
「残念ながらね。でも、この特攻は誇りにこそ思え、非難されるべき事ではない」

(だい)が非難すっとな」
「自らがだよ」杉浦さんは右手で胸をとんと叩いた。
「自ら?」

「切腹を命じられたら自ら腹を切る、それが日本の武士だった。自分が自分に罰を下すなんて国家は、世界広しといえども日本しか存在しない。だからいつか必ず、特攻に関しても腹を切る。小さな非難を大きく受け止め過ぎてね」
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