第35話 ナツとフユの初めてのお外2

文字数 1,875文字

 神社の鳥居を出ると、そこに広がる世界にナツとフユは感激しました。

「わぁ!」
「せいれい いっぱい!」
「これは精霊ではありません。電気です」
「でんき?」
「でんき?」
「えぇ……少し騒がしい神社へと繋がったようですね」

 煌びやかなネオンに心躍らせるナツとフユに、ハルは「あの者の格好をなさい」と言いました。ナツとフユは人目のつかないところへ行き、言われた通りに化けました。スーツ姿に眼鏡をかけた長身の男性と、同じくスーツ姿に髪を下ろした綺麗な女性です。ハルは頭の禿げあがった中年男性に化けました。

「よぉし、二次会行くぞ〜、ヒック」
「へ?えっと……、よぉし、にじかい いくぞ〜、ひっく」
「よ、よぉし、にじかい いくぞ〜、ひっく」

千鳥足のハルに後ろからついて行くナツとフユは、ハルと同じ動きをしました。周りに居合わせた人々は不思議そうな目をして通り過ぎて行きました。
 ハルは人通りのない道へと行くと、元の姿に戻ってナツとフユに言いました。

「お前たち、なぜ私の真似をするのです?」
「だって ハルさまが」
「ハルさま、たのしそうに おどっていました」
「違います!あれは酔っ払ったフリをしていたのです。お前たちが合わせて酔っ払って同じ動きをしてどうするのです」
「え?おどりじゃ ないのですか?」
「わたしたち、おなじように おどらないといけない と おもいました」
「でも、たのしかったね〜!」
「ね〜!」
「……」

 ハルはフユに、ナツに恋人のように寄り添いながら歩くように言いました。そして道へ戻った三人、ハルは先ほどの中年男性の姿をし、フユはハルに言われた通りにしました。周りに居合わせた人々はまた不思議そうな目をして通り過ぎて行きました。
 ハルはまた人通りのない道へと行くと、また元の姿に戻ってナツとフユに言いました。

「フユ、なぜナツの背中に隠れるように寄るのです?腰を低くして、歩きづらいでしょう?」
「よりそうように と いわれました」
「確かに申しあげました。ですが私は『恋人のように』とも申しましたよ。ナツの後ろに寄り添ってどうするのです。忍者ごっこでも始めるのですか?」
「でも、あったかかったね〜!」
「ね〜!」
「……」

 ハルは二人に、恋人のように手と手を繋ぐように言いました。そしてまた道へ戻った三人、ハルはまた中年男性の姿をし、二人は言われた通りにしました。周りに居合わせた人々はクスクスと笑いながら通り過ぎて行きました。
 ハルはまた人通りのない道へと行くと、また元の姿に戻ってナツとフユに言いました。

「お前たち、なぜ両手と両手を繋ぐのです?歩きづらいでしょう?」
「てを つなぐように と いわれました」
「確かにそのように申しあげました。ですが私は『恋人のように』とも申しましたよ。両手を合わせてどうするのです。『タンゴ』でも踊るのですか?」
「でも、おもしろかったね〜!」
「ね〜!」
「……」

 ハルは二人に、普通に歩くように言いました。そして道へ戻った三人、ハルは先ほどの中年男性の姿をし、二人はハルに言われた通りにしました。周りに居合わせた人々は声を出して笑いながら通り過ぎて行きました。
 ハルはまた人通りのない道へと行くと、また元の姿に戻ってナツとフユに言いました。

「お前たち、なぜ四本足で歩くのです?歩きづらいでしょう?」
「ふつうに あるくように と いわれました」
「確かにそのように申しあげました。ですが人間の姿をしているのですから、いつもご主人の前で歩くようにするのが普通です。どこに四本足で外を歩く人間がいますか」
「あ、そっか」
「ごめんなさい ハルさま、はじめての せかいで うれしくて……つい……」
「……もう、今日は帰りましょう」
「え……」
「そんな……」
「また明日、こちらに参りましょう。初めての外の世界ですから、このままでは毒に犯されてしまいますよ」
「ほんとう ですか?」
「あしたも つれてって くれますか?」
「えぇ、明日はご主人も一緒に連れて行って差し上げましょう」

二人は今の感情を体で表現しました。

 無事に戻った三人は、アキに出迎えられました。

「只今戻りました」
「ただいま もどりました!」
「ただいま もどりました!」
「おかえりぃ。無事でよかったねぇ」

玄関の前で話していると、八咫朗が空から飛んできて、アキの肩に乗りました。

「キャー!キャー!」
「やたろう、とべるようになった!」
「すごい!すごい!」
「キャー!」

 その日の夜、ナツとフユはウトウトしながらご飯を食べて、早々に眠りにつきましたーー。
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