第18話 ナツとフユの大げんか1

文字数 1,001文字

 ここは、とある山の中。雨が降る中に静々と佇む日本家屋の居間からは、子供の大きな怒鳴り声が聞こえてきました。

「フユのバカー!」
「ナツのバカー!」
「アホ!」
「マヌケ!」
「おたんこなす!」
「でくのぼー!」
「おてもやん!」
「おっぺしゃん!」
「でべそ!」
「おかめいんこ!」
「ぺてんし!」
「ちんすこー!」

ナツとフユがいがみ合っていると、仕事を終わらせたアキが戻ってきました。

「どうしたの二人ともぉ?座敷まで聞こえてきたよぉ?」
「だって フユが……」
「だって ナツが……」
「もう!わたしが さきにいうの!」
「わたしが いうの!」
「まぁまぁまぁまぁ、一緒に折り鶴で遊ばない?」
「あそぶ!」
「あそぶ!」
「フユは あっちいってよ!」
「ナツが あっちいってよ!」

アキはお手上げ状態です。そこへ、お客様を見送り終わったハルが戻ってきました。

「なんですか大声出して、はしたないですね」
「ハルさま きいて!ナツがね、わたしを ぶったんです」
「ちがうよ!フユが さきに ぶったんでしょ!」
「ナツが わたしの おもちゃを こわしたからでしょ!」
「わざとじゃ ないもん!」
「おやめなさい。おもちゃごときで喧嘩するんじゃありません」

ハルが二人をなだめていると、どこから来たのか、折り鶴が、命が吹き込まれたように部屋を羽ばたいて二人の目の前を通り過ぎました。

「わぁ!」
「わぁ!」
「ほら、折り鶴が羽ばたいてるねぇ」

実は、アキが千代紙で折り鶴を折って言霊を使って動きを付けたのです。
二人は感激して、羽ばたく折り鶴を追いかけました。
宙を舞う折り鶴は、二人の手に届きそうで届きません。すると、懸命に手を伸ばす二人は折り鶴に気をとられて周りが見えておらず、お互いの頭をゴッツンと打ってしまいました。
その反動で二人は尻もちをついて、頭をさすりながらお互いを睨みつけました。そして今までより大きな声で叫びました。

「もう!フユなんか だいっきらい!」
「もう!ナツなんて だいっきらい!」

良かれと思ってやったアキの行動は、見事に裏目に出てしまい、二人の仲はますます悪くなりました。

「二人ともぉ、仲良く……」
「ご主人」
「ん?なぁにハル?」
「ここはお二方の試練の時。助けは無用です。見守ってください」
「で、でも……」
「見守ってください」
「……わかったよぉ」

ということでアキとハルは、二人のこれからの動向を見守ることにしたのです。
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