第48話 アキとハルのお出かけ2
文字数 1,513文字
二人は洞穴の外に出ました。木々に囲まれた中に、細い道が一本あります。ハルは、ひょいと後ろに宙返りすると、いつもの男の姿になりました。そしてアキの前を歩き始めました。土で固められた細い道の奥から、風がそよそよと二人を通り抜けていきました。その風は、花の匂いを運んできてくれて、二人を癒してくれました。
「お日様が出ていますね」
「うん。いい匂いもするねぇ」
お日様が輝いている方へ三分ほど歩いていくと、左側にお地蔵様がありました。二人はお地蔵様に手を合わせると、お地蔵様から煙が出てきました。煙は二人の目をくらまし、煙が晴れた時には、そこにお地蔵様はありませんでした。その時、二人の後ろから「わっ!!」という声がしました。
「はぅあぁっ!」
「なんて声を出すのですか。ふぁぁ、ツユ!」
二人は変な声を出してしまいました。
「巷でいう『ドッキリ』というものをやってみたかったのです。なかなか楽しかったですよ。お二人の驚いた顔」
「おやぁ、してやられたぁ」
「さすがはツユ、驚かせたら右に出る者はいませんね」
アキは額をパチッと掌で叩き笑って見せ、ハルは納得した顔をして首を縦に振りました。
また歩くと、次は石で作られた大きな鳥居が見えてきました。三人がその鳥居の前で深々と一礼をすると、正面から大きな風の髪や服を浮き上がらせました。風を堪能した三人は、鳥居の先へと足を運びました。手水鉢で手を清め、さらに先へ行くと長い石段があります。その石段の前で何かが座っていました。小さな白い狐と、小さな赤い狐です。金色の目をしており、それぞれ尻尾が二本、ふわふわとした毛をまとって、ゆらゆらと揺らしていました。
「白狐様、赤孤様、アキ様、お待ちしておりました」
「翁様たちがお待ちでいらっしゃいます」
小さな狐たちは、丁寧に頭を下げました。それに合わせて三人も頭を下げ、一通りの挨拶を済ませると、狐たちに、奥へと案内されました。大きな木が参道を囲み、そよ風が、葉を、枝を揺らします。さらさらと良い音が周りを包みます。参道の奥は社が立っています。どこの神社にでもある普通の社。三人は社の前で一礼し、柏手を二つ叩きました。二匹は、三人の横に座り、頭 を垂れました。すると、社の床下や屋根の上、奥から、大小さまざまな狐が現れ、三人を囲みました。三人は跪き、頭を下げて目を閉じました。
三人の正面に現れた狐が言いました。
「どうか顔を上げてくれ。よく来てくれた。礼を言う」
「とんでもないことです」
「九尾 よ、達者で何よりだ」
「……ふん」
「……ふん」
ハルが不機嫌な顔をしたので、アキは小さな声で「ハル」と言いました。
「どうせ、また厄介ごとでも頼もうとしてるんでしょう」
ツユがとげとげしい声色を出したので、アキは小さな声で「ツユ」と言いました。
「赤狐!空孤 様に向かってなんて口の利き方だ!」
「翁様のお慈悲を忘れたか!」
「お慈悲?私たちの魂は分かたれたままです」
「それは、人の子に悪さをしたからであろう?」
「元々は人の子が私を……」
今にも喧嘩になりそうになったその時、アキが話を割って入ってきました。
「えぇぇっとぉあのぉ、私たちに何か御用でしょうか?」
アキの問いに正面の狐が素直に答えました。
「翁様が折り入って頼みがあられるそうだ。詳しくは、社の中へ」
狐たちは、わらわらと社の横に並びました。三人はゆっくりと立ち上がり、社の中へ足を運びました。
少し薄暗い社の中は、杉の香りで満たされており、その階段を上った奥の扉付近は、最も香りが濃くなっています。三人は杉の香りに癒されながら、奥の扉に進みました。木でできた扉は、持ち手が朽ちてしまって使えません。アキは扉をこじ開けて中に入りました。
「お日様が出ていますね」
「うん。いい匂いもするねぇ」
お日様が輝いている方へ三分ほど歩いていくと、左側にお地蔵様がありました。二人はお地蔵様に手を合わせると、お地蔵様から煙が出てきました。煙は二人の目をくらまし、煙が晴れた時には、そこにお地蔵様はありませんでした。その時、二人の後ろから「わっ!!」という声がしました。
「はぅあぁっ!」
「なんて声を出すのですか。ふぁぁ、ツユ!」
二人は変な声を出してしまいました。
「巷でいう『ドッキリ』というものをやってみたかったのです。なかなか楽しかったですよ。お二人の驚いた顔」
「おやぁ、してやられたぁ」
「さすがはツユ、驚かせたら右に出る者はいませんね」
アキは額をパチッと掌で叩き笑って見せ、ハルは納得した顔をして首を縦に振りました。
また歩くと、次は石で作られた大きな鳥居が見えてきました。三人がその鳥居の前で深々と一礼をすると、正面から大きな風の髪や服を浮き上がらせました。風を堪能した三人は、鳥居の先へと足を運びました。手水鉢で手を清め、さらに先へ行くと長い石段があります。その石段の前で何かが座っていました。小さな白い狐と、小さな赤い狐です。金色の目をしており、それぞれ尻尾が二本、ふわふわとした毛をまとって、ゆらゆらと揺らしていました。
「白狐様、赤孤様、アキ様、お待ちしておりました」
「翁様たちがお待ちでいらっしゃいます」
小さな狐たちは、丁寧に頭を下げました。それに合わせて三人も頭を下げ、一通りの挨拶を済ませると、狐たちに、奥へと案内されました。大きな木が参道を囲み、そよ風が、葉を、枝を揺らします。さらさらと良い音が周りを包みます。参道の奥は社が立っています。どこの神社にでもある普通の社。三人は社の前で一礼し、柏手を二つ叩きました。二匹は、三人の横に座り、
三人の正面に現れた狐が言いました。
「どうか顔を上げてくれ。よく来てくれた。礼を言う」
「とんでもないことです」
「
「……ふん」
「……ふん」
ハルが不機嫌な顔をしたので、アキは小さな声で「ハル」と言いました。
「どうせ、また厄介ごとでも頼もうとしてるんでしょう」
ツユがとげとげしい声色を出したので、アキは小さな声で「ツユ」と言いました。
「赤狐!
「翁様のお慈悲を忘れたか!」
「お慈悲?私たちの魂は分かたれたままです」
「それは、人の子に悪さをしたからであろう?」
「元々は人の子が私を……」
今にも喧嘩になりそうになったその時、アキが話を割って入ってきました。
「えぇぇっとぉあのぉ、私たちに何か御用でしょうか?」
アキの問いに正面の狐が素直に答えました。
「翁様が折り入って頼みがあられるそうだ。詳しくは、社の中へ」
狐たちは、わらわらと社の横に並びました。三人はゆっくりと立ち上がり、社の中へ足を運びました。
少し薄暗い社の中は、杉の香りで満たされており、その階段を上った奥の扉付近は、最も香りが濃くなっています。三人は杉の香りに癒されながら、奥の扉に進みました。木でできた扉は、持ち手が朽ちてしまって使えません。アキは扉をこじ開けて中に入りました。