第6話 ナツとフユの金稼ぎ2

文字数 2,283文字

 ナツとフユは焚き火を消して、二人で話をしました。

「ナツ、わたしたち、わるいことしちゃったね」
「うん、そうだね。ごしゅじん、かなしんでた。おこってた」
「……かせいだら、ごしゅじん わらうかな?」
「……かせいだら、ごしゅじん、おこらなくなるかな?」

ということで、二人でお金を稼ごうということになりました。

二人で話し合ってる様子を、ハルとアキは遠くから見ていました。

「どうやらあの子達、自分たちでお金を稼ごうとしてますね」
「わぁ凄いねハル、聞こえたのぉ?」
「えぇ、狐は耳がいいのです」
「そっかぁ、どうやって稼ぐのかなぁ?物売りぃ?心配だなぁ」
「ご主人、私、あの子達を見ていても良いですか?」
「うん、よろしくぅ」

ハルは、出かけようとする二人の後をついていきました。アキは一人、呟きます。

「薬が効きすぎたかなぁ?今日またお金が入るんだけどねぇ……」

アキは家の奥に入って行きました。

「やっぱり今晩のおかずは、天ぷらにしよう……」



 一方、ナツは、山の中で木の実を摘んでいました。

「これをうったら、おかねもらえるかな?」

そしてフユは、木の葉を摘んでいました。

「これをうったら、おかねもらえるかな?」

二人は集めたものを持って、山の中を歩き始めました。途中、お地蔵様があったので、二人は手を合わせてお参りし、売り物の木の実と木の葉を置きました。

「これ、おじぞうさまにおすそわけ」
「わたしたち いそがしいから、もういくね」

二人は、お地蔵様を後にしました。
二人の姿が見えなくなると、お地蔵様は弾みをつけて後ろに宙返りをして姿を変えました。実は、ハルがお地蔵様に化けていたのです。

「あの子達、何をするつもりなんでしょう?」

ハルは、頭を傾げました。


 二人は、とあるところに辿りつきました。いつも水を汲みに行く二人は、ここで喉の渇きを癒します。
そう、川の水源です。水は清く澄んでいて、二人だけではなく、鳥などの動物たちもやってくる場所です。
そこで二人は集めたものを広げ、そこにいる動物達に言いました。

「いらっしゃい いらっしゃ〜い」
「やすいよ やすいよ〜」
「おいしい きのみだよ〜」
「きれいな このはだよ〜」

動物達は頭を傾げ、喉を潤したらそそくさと何処かへ行ってしまいました。

「あれぇ?」
「うれないねぇ」

しばらくして、一匹のリスが二人の元へ行き、木の実に興味を持ちました。そして、一つの木の実を口に入れて持ち去っていきました。

「あれぇ、もっていかれた」
「きっと、おかねをもってきてくれるんだよ」

しかし、待てど暮らせどお金を持ってきませんでした。

「こないねぇ」
「これじゃあ おかねをかせげないよ」

二人は移動し始めました。二人の姿が見えなくなると、先ほどのリスが宙返りをしました。実は、ハルがリスに化けていたのです。

「売れるわけありません。動物はお金を持っていないんですから」

ハルは、頭を掻きました。

 次に二人は川沿いに下り始めました。途中、お地蔵様が三体あったので、二人はそれぞれに手を合わせてお参りし、売り物の木の実と木の葉を置きました。

「これ、おじぞうさまにおすそわけ」
「わたしたち、かせがないといけないから、もういくね」

二人の姿が見えなくなると、お地蔵様は高く飛んで後ろに宙返りをして姿を変えました。実は、ハルが三体のお地蔵様に化けていたのです。

「売り物をお供えするとは……」

 二人が川を下ると、遠くの方の川べりに誰かが座っていました。二人はそれを見て、誰か分かると、走って向かって行きました。

「きゅうせんぼ〜う!」
「きゅうせんぼ〜う!」
「……クァ?」

九千坊(きゅうせんぼう)と呼ばれるその河童は、この川に住む、川の主です。天気のいい日はたまに水から上がり、背中の甲羅や体を乾かします。苔が生えるのを抑えるためです。

「なんしよっとクァ?」(訳……何やってるの?)
「きゅうせんぼう、これ かわない?」
「……なんクァそれ?葉っぱクァ?」(訳……なにそれ?葉っぱかい?)
「うん!きのみもあるよ!」
「ゲーン、木の実はよクァ!なん、金ん要っとクァ?」(訳……うわぁ、木の実は要らないよ!なんだい、金が要るのかい?)
「うん」
「うん」
「なんで?」(訳……なんで?)

二人は、カクカクシカジカと話しました。九千坊は、笑いました。

「なぁんばしよっとクァ」(訳……なぁにやってんだよ〜)
「だってぇ」
「だってぇ」
「ばってん、やったもんは、しょんなかたい。どぉ、おっちゃんが葉っぱば買ってやったい!」(訳……でも、やった事は仕方ないな。どれ、おじちゃんが葉っぱを買ってあげるよ!)
「ほんと?」
「おかね あるの?」
「紙じゃなクァばってん」(訳……紙じゃないけど)
「かみじゃないの?」
「かみじゃないの?」
「なん、紙がよかっクァ?紙は持たんもん。ばってん、こら、そ〜ん美しクァばい」(訳……なに、紙がいいの?紙は持ってないんだよ。でも、これは、とっても美しいよ)

二人は九千坊にありったけの葉っぱを渡しました。九千坊は、二人の手のひらに、キラキラと輝くものを乗せました。

「これなぁに?」
「これなぁに?」
「百円玉」(訳……百円玉)
「わぁ!きれい!」
「すご〜い!」

二人は、紙の事を忘れて百円硬貨をまじまじと見つめました。そして、お礼を言って、また歩き始めました。九千坊は、二人に手を振り続けました。


 二人の姿が見えなくなると、九千坊は水の中に入り、姿を変えて上がってきました。実は、ハルが九千坊に化けていたのです。

「九千坊はクセがあり過ぎて化けるのが大変です。少し……疲れた」

ハルは、ふらふらと揺れながら、二人を追いかけました。
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