第3話 今日の日常〜筍〜1
文字数 1,040文字
ここは、とある山の中。今日も鶯がどこからでも聞こえてくるこの山に、一人の人と、三匹の狐がいました。
「いいですかお二方、何かに変幻する時は、きちんと頭の中で思い浮かべてください。例えば、妖艶な女 の子 になりたければ……」
二匹の子狐の前で、白い狐が、ふわりと後ろに宙返りをしました。その時、白い狐は瞬く間に花魁の姿をした艶やかな女性に変身しました。横座りをし、キセルを持ち、その姿は、世の男性をいとも簡単に虜にしてしまいそうなほど、それはそれは美しい女性です。
「うわぁ」
「うわぁ」
二匹の子狐は、目を輝かせました。
「さぁ、ナツ、フユ、やってご覧なさい」
声まで艶やかでまろやかです。
ナツ、フユと言われた子狐は、白い狐と同じように宙返りをし、花魁の女性に変身しました。ですが、どうも違和感があります。
ナツが変身した花魁は、顔は花魁の艶やかな女性の顔です。しかし、首から下は狐の姿そのものです。
「ナツ、顔しか出来ていませんよ」
「えぇ〜?」
「ほら、そう言っているうちに顔が歪んで来ましたよ」
フユが変身した花魁は、狐の尻尾が付いており、それが左右に揺らめいています。
「フユ、声を出してごらんなさい」
「そこのおにいさぁん、わたしとあそびましょうよぉ〜」
「低い!とてつもない重低音ですね。その声では女の子とは言えません」
「えぇ〜?」
「ほら、そう言っているうちに、足元から獣になっていってますよ」
二匹の花魁は、すぐさま元の姿に戻りました。
「お二方、まだまだですね。これでは『白狐』にはなれませんよ。いいのですか?このまま『野狐』のままで?」
「いやです!」
「わたしたちも、りっぱな びゃっこ になりたいです!」
「では、ますます精進を怠らぬように」
「はい、ハルさま!」
「はい、ハルさま!」
これらを、一軒家の縁側に座って見ている人がいます。
「ナツ、フユ、だいぶ上手になったねぇ」
「え?ほんと?」
「わたしたち びゃっこ になれる?」
「えぇ、頑張ったらなれるよぉ」
「やったぁ!」
「やったぁ!」
浮かれているナツとフユに、ハルと呼ばれる白い狐が一喝しました。
「お前達、精進を怠らぬように!」
「はぁい」
「はぁい」
「ご主人、甘やかすことはなりません」
「ごめんなさ〜い」
「では、お二方!もう一度ですよ?」
「はい」
「はい」
狐の特訓がまた始まりました。
その時、一軒家の屋根の方から、「お取り込み中かな?」という声が聞こえました。ご主人と呼ばれるその人は、声のする方に顔を向けると、そこには、馴染みのある姿がありました。
「いいですかお二方、何かに変幻する時は、きちんと頭の中で思い浮かべてください。例えば、妖艶な
二匹の子狐の前で、白い狐が、ふわりと後ろに宙返りをしました。その時、白い狐は瞬く間に花魁の姿をした艶やかな女性に変身しました。横座りをし、キセルを持ち、その姿は、世の男性をいとも簡単に虜にしてしまいそうなほど、それはそれは美しい女性です。
「うわぁ」
「うわぁ」
二匹の子狐は、目を輝かせました。
「さぁ、ナツ、フユ、やってご覧なさい」
声まで艶やかでまろやかです。
ナツ、フユと言われた子狐は、白い狐と同じように宙返りをし、花魁の女性に変身しました。ですが、どうも違和感があります。
ナツが変身した花魁は、顔は花魁の艶やかな女性の顔です。しかし、首から下は狐の姿そのものです。
「ナツ、顔しか出来ていませんよ」
「えぇ〜?」
「ほら、そう言っているうちに顔が歪んで来ましたよ」
フユが変身した花魁は、狐の尻尾が付いており、それが左右に揺らめいています。
「フユ、声を出してごらんなさい」
「そこのおにいさぁん、わたしとあそびましょうよぉ〜」
「低い!とてつもない重低音ですね。その声では女の子とは言えません」
「えぇ〜?」
「ほら、そう言っているうちに、足元から獣になっていってますよ」
二匹の花魁は、すぐさま元の姿に戻りました。
「お二方、まだまだですね。これでは『白狐』にはなれませんよ。いいのですか?このまま『野狐』のままで?」
「いやです!」
「わたしたちも、りっぱな びゃっこ になりたいです!」
「では、ますます精進を怠らぬように」
「はい、ハルさま!」
「はい、ハルさま!」
これらを、一軒家の縁側に座って見ている人がいます。
「ナツ、フユ、だいぶ上手になったねぇ」
「え?ほんと?」
「わたしたち びゃっこ になれる?」
「えぇ、頑張ったらなれるよぉ」
「やったぁ!」
「やったぁ!」
浮かれているナツとフユに、ハルと呼ばれる白い狐が一喝しました。
「お前達、精進を怠らぬように!」
「はぁい」
「はぁい」
「ご主人、甘やかすことはなりません」
「ごめんなさ〜い」
「では、お二方!もう一度ですよ?」
「はい」
「はい」
狐の特訓がまた始まりました。
その時、一軒家の屋根の方から、「お取り込み中かな?」という声が聞こえました。ご主人と呼ばれるその人は、声のする方に顔を向けると、そこには、馴染みのある姿がありました。