最終話
文字数 1,919文字
エピローグ
理科の閉じたまぶたに光が感じられた。
うっすらと目を開けるとそこは病室だった。
天井は白く、耳からは忙しく歩き回る人の足跡。
緊急病棟。理科はそこに搬送され、そこのベッドで意識を取り戻したのだ。歩き回る音は、看護師の足音。理科は横を向く。そこに人影が見えたからだ。
「意識が戻ったみたいね」
頭に包帯を巻いた千鶴子の声。
「お姉ちゃん!」
ちはるもいる。
二人はずっと、理科の様子を見にこの病棟に足繁く通っていたのだ。見舞いできる時間をフルに使って。
「ちはる。それに千鶴子も……」
「お姉ちゃん! お姉ちゃん! 良かったぁ……」
何度も声に出して理科を呼び、、ちはるは泣き出す。理科が意識を取り戻したのに喜んでいるのだ。千鶴子も目に涙をためている。ああ、この人たちのためにも、私は生きているべきなのだな、と思った。
「美菜子……」
理科は呟く。そう、美菜子。夢の中でずっと、死んだ二番目の妹、美菜子と一緒だった気がする。美菜子の顔を思い浮かべるが、その顔はみっしーだった。みっしー?
「ちはる、みっしーは?」
ちはるは首を横に振る。
代わりに答えるのは千鶴子。
「みっしーは、あの日から、いなくなったわ」
行方不明、という言い方は、千鶴子にはできなかった。理科のため、というよりも、そう思いたくないから、という理由もある。それだけ、みっしーの存在はみんなから愛されていたのだ。千鶴子だって、みっしーが好きだった。
理科は「そう」とだけ言い、また天井に目を向ける。
みっしー……。そうか、あの子、美菜子だったのか。
理科にも気づけた、あの子は美菜子と同一人物だったのだ、と。
「……関係、断ち切れてないじゃないのっ……あのバカッ」
理科は誰にでもなくそう言い、それから二人に、
「ありがとう。もう大丈夫だから」
と言った。
そう、私はこれからも生きていく。
決心は、揺るぎない。生きて、みんなと共にアートの人生を生きるのだ。ずっと。
☆
『とんかつしゅーちゃん』で味噌カツを食う二人の人物。みっしーと、エンジェル・ジャクソンである。
その二人の食べっぷりを見て、店主すめろぎしゅーこは「やれやれ」と思う。
「あたいが言うコトでもないと思うけど、二人とも普段、あまりいい食生活を送れてないんじゃないかい」
「Oh! それは言うナヨ」
「いや、しゅーこは正しいです。ボクたちはむしょ……、いや、フリーランスなので金巡りが悪いのですよ」
「思いっきり無職って言おうとしてたわよね」
「ノープロブレム! おれたちは人外なので、結構タフなんダヨナ」
「一旦この過多萩に戻ってきて筆王の気配をさぐったはいいものの、あのオヤジ、上手い具合に地下に逃げ込んだらしいです」
「おれたちガ怖いと見えるナ」
「あたいにはよくわなんないけど、たまにここに寄りなよ。うまいもん食わせてあげるよ」
「本当ですか!」
「うん。私もあなたたちにお世話になったからさ、そのおかえしさ」
味噌カツを平らげて、二人は席を立つ。
「本当にタダでいいのですか?」
「サービスするわ。出世払いでいいからさ」
「ありがたいです……」
みっしーとジャクソンは店を出る。この菊屋横町に来るコトは、今後あるだろうかと、みっしーは思う。
みっしーは十王庁と、ジャクソンは魔界・天界と、それぞれ死神の大鎌で縁を断った。そして今は、消えた筆王の探索をしているのだ。どうやら、筆王と二人の縁の方は、まだ続いてるというコトらしい。あいつを消さない限り、今後どういう事態にこの世界がなるか、全く予想がつかない。予想がつかないのがこの世界だとしても、筆王の存在は、それにしたって危険すぎる。みっしーとジャクソンは共同戦線を張り、筆王を倒すために、今は方々を歩き回っているのだ。
「全く、この旅は長くなりそうですね……」
呟くみっしーは、なんだかお尻がむずむずしてきた。どうやらトイレがボクを呼んでるみたいですね、と思い後ろを振り返ると。
そこにはおしりに顔を埋めたバツ子がいた。
「強烈なおならを一発頼む!」
みっしーは身体をわなわな震わす。
「こんんんのォォォォ、ケツ豚がああああああぁぁぁぁぁッッッ!!」
みっしーは思いっきりバツ子の顔を蹴り上げる。
バツ子は両方の鼻から鼻血をぶちまけながら、放物線を描くように宙を飛んだ。
なんか、縁を切ろうに切れない関係を持つ奴らが多すぎだな、とみっしーは思ったのだった。
そしてみっしーの旅はここから始まる。
(終劇)
理科の閉じたまぶたに光が感じられた。
うっすらと目を開けるとそこは病室だった。
天井は白く、耳からは忙しく歩き回る人の足跡。
緊急病棟。理科はそこに搬送され、そこのベッドで意識を取り戻したのだ。歩き回る音は、看護師の足音。理科は横を向く。そこに人影が見えたからだ。
「意識が戻ったみたいね」
頭に包帯を巻いた千鶴子の声。
「お姉ちゃん!」
ちはるもいる。
二人はずっと、理科の様子を見にこの病棟に足繁く通っていたのだ。見舞いできる時間をフルに使って。
「ちはる。それに千鶴子も……」
「お姉ちゃん! お姉ちゃん! 良かったぁ……」
何度も声に出して理科を呼び、、ちはるは泣き出す。理科が意識を取り戻したのに喜んでいるのだ。千鶴子も目に涙をためている。ああ、この人たちのためにも、私は生きているべきなのだな、と思った。
「美菜子……」
理科は呟く。そう、美菜子。夢の中でずっと、死んだ二番目の妹、美菜子と一緒だった気がする。美菜子の顔を思い浮かべるが、その顔はみっしーだった。みっしー?
「ちはる、みっしーは?」
ちはるは首を横に振る。
代わりに答えるのは千鶴子。
「みっしーは、あの日から、いなくなったわ」
行方不明、という言い方は、千鶴子にはできなかった。理科のため、というよりも、そう思いたくないから、という理由もある。それだけ、みっしーの存在はみんなから愛されていたのだ。千鶴子だって、みっしーが好きだった。
理科は「そう」とだけ言い、また天井に目を向ける。
みっしー……。そうか、あの子、美菜子だったのか。
理科にも気づけた、あの子は美菜子と同一人物だったのだ、と。
「……関係、断ち切れてないじゃないのっ……あのバカッ」
理科は誰にでもなくそう言い、それから二人に、
「ありがとう。もう大丈夫だから」
と言った。
そう、私はこれからも生きていく。
決心は、揺るぎない。生きて、みんなと共にアートの人生を生きるのだ。ずっと。
☆
『とんかつしゅーちゃん』で味噌カツを食う二人の人物。みっしーと、エンジェル・ジャクソンである。
その二人の食べっぷりを見て、店主すめろぎしゅーこは「やれやれ」と思う。
「あたいが言うコトでもないと思うけど、二人とも普段、あまりいい食生活を送れてないんじゃないかい」
「Oh! それは言うナヨ」
「いや、しゅーこは正しいです。ボクたちはむしょ……、いや、フリーランスなので金巡りが悪いのですよ」
「思いっきり無職って言おうとしてたわよね」
「ノープロブレム! おれたちは人外なので、結構タフなんダヨナ」
「一旦この過多萩に戻ってきて筆王の気配をさぐったはいいものの、あのオヤジ、上手い具合に地下に逃げ込んだらしいです」
「おれたちガ怖いと見えるナ」
「あたいにはよくわなんないけど、たまにここに寄りなよ。うまいもん食わせてあげるよ」
「本当ですか!」
「うん。私もあなたたちにお世話になったからさ、そのおかえしさ」
味噌カツを平らげて、二人は席を立つ。
「本当にタダでいいのですか?」
「サービスするわ。出世払いでいいからさ」
「ありがたいです……」
みっしーとジャクソンは店を出る。この菊屋横町に来るコトは、今後あるだろうかと、みっしーは思う。
みっしーは十王庁と、ジャクソンは魔界・天界と、それぞれ死神の大鎌で縁を断った。そして今は、消えた筆王の探索をしているのだ。どうやら、筆王と二人の縁の方は、まだ続いてるというコトらしい。あいつを消さない限り、今後どういう事態にこの世界がなるか、全く予想がつかない。予想がつかないのがこの世界だとしても、筆王の存在は、それにしたって危険すぎる。みっしーとジャクソンは共同戦線を張り、筆王を倒すために、今は方々を歩き回っているのだ。
「全く、この旅は長くなりそうですね……」
呟くみっしーは、なんだかお尻がむずむずしてきた。どうやらトイレがボクを呼んでるみたいですね、と思い後ろを振り返ると。
そこにはおしりに顔を埋めたバツ子がいた。
「強烈なおならを一発頼む!」
みっしーは身体をわなわな震わす。
「こんんんのォォォォ、ケツ豚がああああああぁぁぁぁぁッッッ!!」
みっしーは思いっきりバツ子の顔を蹴り上げる。
バツ子は両方の鼻から鼻血をぶちまけながら、放物線を描くように宙を飛んだ。
なんか、縁を切ろうに切れない関係を持つ奴らが多すぎだな、とみっしーは思ったのだった。
そしてみっしーの旅はここから始まる。
(終劇)