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文字数 780文字
あれ? アキラくんは? とあたりを見回したら、タラップの下で血にまみれたアキラくんがぐったりと横たわっているのが目に入った。
思わず悲鳴を上げて、急いでタラップの下へ降りる。
「アキラくん! アキラくん!」
しばらく頬っぺたをピタピタ叩いて声を掛けていると、小さな唸り声を上げてアキラくんが気付いた。ぼんやりと開いた目に次第に光が戻ってくる。
「あ……」
「大丈夫? 血まみれよ? どこかケガしてない?」
「血……? 怪我………」
アキラくんは茫然とした顔でゆっくり起き上がった。
その、陶器のような顔や白いTシャツに点々と散った血飛沫。
ヒラヒラと羽毛が舞い散り、不謹慎にもキレイだと思ってしまった。
アキラくんはそろそろと周囲の光景を確認し、息をのんだ。
どこか、頭でも打ってしまったのかしら?
「大丈夫?」
もう一度訊く。
アキラくんはそれには答えず、Tシャツに散った血を見て、言葉もないという風だ。
ただただ、放心している。
「オレは……、怪我して………ない。でも……」
手の届くところで絶命していた不自然な方向に首が曲がったハトを、震える手で手繰り寄せる。
「こいつらには……済まないことをした。本当に……申し訳ないことを……」
アキラくんは、手やシャツが血まみれになるのも厭わず、そっとハトの死骸を抱きしめて頭を垂れた。
「ごめん……。本当に………こんなことになるなんて……。許してくれなんて言わない………利用したオレが、……最低だ」
「アキラくん………」
色々、聞きたいこと正したいことがたくさんあったのに、私は何も言えなかった。