モニタ室

文字数 761文字

「ンふふふっ」

 さっきから笑いが止まらない。オレの居住区にオゼンが来てる。勿論、ここはオレの体格に合わせているからオゼンには窮屈だ。

「キモイな……」

 頭の直ぐ上でオゼンがぼやく。オゼンの腹の前で抱きかかえられるようにして一緒にモニタを覗き込んでいる。これが笑わずにいられようかってんだ。

「信号をキャッチできたKARASUにはビーコンを付けたから、ここから見えるようになった。周波数を変えてるから、多分あっちには気付かれない」 

 モニタに表示されているKARASUのビーコンは、水面に落とした水滴のようだ。モニタ表示される範囲や角度をあちこちいじりながら、オゼンは、ふむ、と頷いた。うひゃひゃ。オデコに息が当たる。

「このビーコンの円が全て重なるところに、発信源の奴らが居るってことだな」
「そういうこと。今はアクティブじゃないけどな」
「……それにしても、アコギな奴がいるもんだな」
「闇市場の連中のこと?」
「ああ。人の弱みに付け込んでやがる。卑怯な奴らだ。そういうの、オレは嫌いだ」

 オレはオゼンの顔を見上げた。パクッとその顎に噛みつく。

「止めろ。甘噛みすんな。一人で盛り上がってんじゃねぇよ」
「むーりー」
 喉の奥でクククと笑う。
「少なくとも、この仕事が終わってからにしろ」
「ちぇっ。真面目だなぁ」
「真面目だよ。チクショー。次、金入ったら居住区広げんぞ」
「オレ、このまんまでイイ」
「うっせ。狭いわ」 

「それよかさー、オゼン」
「ン? なんだ」
「オゼンの義体作ってもらおーよ。デートすんだろ?」
 オレの頭をポスッとオゼンの手の平が覆った。
「……ばーか。いくらかかると思ってるんだよ」
「シムーさん、お駄賃弾んでくれないかなぁ」
「いくらナンでもそれは贅沢ってもんだ」 
 モニタを映したオゼンの目が光った。
「オレは、これでも十分満足だぜ」
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登場人物紹介

アイン


地球外生命体。実体は節足動物に近い形状の雌雄同体。6本指。

年齢と共に徐々に大型化する性質を持つ。

軌道上に停泊している宇宙船から、地球の様子を撮影して動画配信している。

地上活動をする時は、義体と呼ばれる地球人を模したアバターと同期する。

オゼンと行動を共にする前は、争いごとの仲裁をするネゴシエイターを生業としていた。

人当たりがよく陽気な性格。自分を受け入れてくれたオゼンが大好き。


相馬瞳(そうまあきら)

アインが同期するアバター。

身長167㎝。男性。

「草食系男子」の設定。

オゼン


地球外生命体。実体は節足動物に近い形状の雌雄同体。6本指。

年齢と共に徐々に大型化する性質を持つ。アインよりも年長で、体高が2mほどある。

アインからの提案で、フリゲート艦であった宇宙船を基地局に改造して動画配信している。

義体との体格ラグが苦手で、地上活動をするのは得意ではない。

かつては武器製造業を生業としていたが、職種変えした過去を持つ。

アインの声に惚れて自艦に引き入れたものの、思いの外若かったので微妙に距離を取りたい……。


空知聖(そらちさとる)

オゼンが同期するアバター。

身長195㎝。男性。筋肉質。

義体との体格ラグを少なくするために、アインが発注して高身長のアバターを作ってもらった。

木崎麗(きざき うらら)


アラサー独身。東雲綜合警備保障の広報課勤務。

かつては世界大会で名を馳せたアマチュア格闘家。

177㎝、78㎏超級で活躍していた剛健なイメージから、

現役時代は社のイメージキャラクターを勤めていた。

もっか婚活中だが、格闘家のイメージが強すぎて上手くいかないのが悩み。

柴田正樹(しばた まさき)


28歳。独身。

激務に疲弊して退職し、失業保険と貯金の切り崩しとで生活している。

今後の身の振り方に迷っている最中、とある不思議現象に遭遇してしまい

陰謀論者団体の片棒を担ぐことになる。

本人は慎重なつもりだが、簡単にコロリと説得されてしまう素直な性格。


パイ


アイン、オゼンと同じ星系人。義体などのアバター製造を得意とする。

タワーマンションの上階ワンフロアを買い上げて、外星系人のための義体レンタル業をしている。


遠州律子(えんしゅう りつこ)

パイが同期するアバター。筋骨隆々のガタイの良いオカマ。

外星系人向け会員制ラウンジ『夜間飛行(ヴォル・ドゥ・ニュイ)』のママ。

「宇宙人生活相談」的なこともしている。

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