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文字数 914文字
「アキラくん。該当のカラスの周波数帯が分かったよ。少なくとも、マンション周辺には常に7.8羽がいるみたいだ」
「え? そんなにいるんですか?」
オレは目を瞬いた。3羽どころじゃなかったわけだ。
「あと、残念なお知らせだけれど、……ハトの死骸も見つけた。2羽。いずれも、標識が付いていた」
「そう……ですか」
なんとまぁ、情報収集ギミックに約一割の損害か。ハト6羽って言ったら、ここらに放ったヤツの半分だ。ここまで狙い撃ちだと、やはり意図的に破壊してるんだな。電波が邪魔なのか、思惑を知られるのが嫌なのか。いずれにせよ、ムカつく野郎だ。こっちが泣き寝入りすると思ってるんだ。
「駅前公園とオフィス街は?」
「3日ほど粘ったけど、常駐はしていないみたいだね。通勤時間帯で1,2羽巡回する感じだ。やっぱり、大多数のカラスはこの建物周辺でキャッチされる」
柴田さんは薄曇りの空を背景にそびえるタワーマンションを見上げた。
「ふうん……」
オレも視線を同じくしながら、柴田さんに訊く。
「アンテナ、持ってきてます?」
「ああ。持ってきたよ」
柴田さんは自分のリュックを撫でた。
オレは、髪に触れる振りで耳に仕込んだフォーカスのスイッチを入れる。視界に入る動くものに四角い枠が点滅する。視界の端でチカチカしているのはスズメの群れだろう。
「じゃぁ、該当のカラスにビーコン付けますかね」
「ビーコン?」
「顔認証システムみたいなものです。カラスの特徴を登録しておいて、モニタに登録しておくとアンテナ無くても該当のカラスを見つけることができます」
「へぇえ。凄いな。東雲の技術なのか?」
「凄いですよね。仕組みまでは分かりませんが」
にっこり笑って大嘘をつく。
実際のところは軌道上からKARASUを捕捉できるようにするのだ。オゼンにも見えるように。信号が軌道上に届かないのなら見えるように印をつけるまでだ。
たかが配信屋風情だって? このまま泣き寝入りすると思うなよ。