2-side2
文字数 1,235文字
「ええと、持ち帰りなんですけど、イングリッシュブレイクファーストティーラテのミルクを豆乳にしたの一つと、カフェアメリカーノにエスプレッソショットをプラスしてチョコレートソースとホイップを足してください。あと、バニラクリームフラペチーノにチョコレートソースとチップをトッピングしたのも」
ふう。全部言えた。これがオジサマたちの注文だって言うんだから笑っちゃうわ。とりあえず、チョコ&ホイップのオンパレードは、とにかく甘そうってことだけは判る。店員さんが注文の品を作ってくれている間カウンターの端に寄って待っていると、後ろから声をかけられた。
「こんにちは。朝会ったお姉さんですよね」
「え?」
振り返ると、今朝、一緒の電車に乗った男の子がニコニコして立っていた。
「お使いですか?」
「……ええ、あの職場の人の分を」
私の手元のメモを覗き込んだ男の子は、ふうん、と首を傾げた。
「お姉さんの分は?」
「あ、えと……」
コーヒーは嫌いじゃないけど、こういうとこで注文するのは、苦手。戸惑って、視線をあちこちに向けていると、男の子はニコッと笑って手にしているカップを差し出した。
「これ、カフェアメリカーノなんですけど、まだ口付けてないんです。お姉さん、もらってくれますか」
「ええっ? そんな」
よく知らない人から奢ってもらうようなのは、どうかと思うけど……。どう反応したらよいのか躊躇っていると、男の子は更に畳みかけた。
「お姉さん、
「え? あっ」
首から下げてた社員証見たのね。うっかりポケットに入れるの忘れてたわ。慌てて裏返したけど、後の祭りだ。思わず赤面してしまった。アキラくんは、カウンターの中に声を掛けた。
「さっきコーヒー淹れてくれたお姉さん! ごめんなさい。急用入っちゃって飲めなかったんだ。こっちのお姉さんにオレの分あげちゃったけど、気を悪くしないでね」
カウンターの内にいた店員は驚いた顔をして振り返った。わざわざこんなことを言う客は居ないのだろう。
「次に来た時は、ちゃんと味わっていただくから」
アキラくんは店員にウィンクすると、こちらにも手を振って、じゃぁねーと店を出て行った。普通、そんなあざといことしたら現実離れしすぎて空回りするのに、えええ……そんな、少女漫画の登場人物みたいな子が、存在する? 私は茫然としてアキラくんの背中を見送った。
「お待たせしましたー」
注文の出来上がりを知らせる店員の声に振り返ると、店員も顔を赤くしている。そうよね、あんな、顔が良すぎる若い男の子にあんなことされちゃ、そういう反応になっちゃうわよね。