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文字数 980文字
いきものとしては極端な性格だったらしいオゼン以外に関わってきたモノ、というと、大概が攻撃対象だったので、艦から切り離されても普通のコミュニティで生活するのはまず無理と言われ、ここ天空のフロアで悠々自適生活を与えられた。
毎時サテライトからの信号チェックや哨戒レーダー照射や通信傍受やデコイのばらまきや航路のモニタや動力系チェックや燃料残量の計算や艦内環境の調整などなど、しなくていいの楽ー。メッチャ楽ー。
代わりに、パイの業務補佐や、犬型星系人のお世話係を任じられている。
「んーで? なんでオレにお鉢が回ってきたわけ?」
私の目の前で、ブスくれているのはアインの入った義体。今日は、平均的なサラリーマン「目黒義和さん」の義体をまとっている。
「あら、パイさんから説明されてませんでした? 私がオーバーホールすることになって、警備会社さんに代替人員を要求したんですけど、いつも代わって下さる外星系人のアヤクさんの都合がつかなかったんです」
「だったら、アヤクさんの都合のつく日にオーバーホールすりゃいいじゃんか」
「そうしたら、パイさんの都合が悪いんですよ。オゼンの義体を発注したの、アインですよね?」
「は? そこでそうつながる?」
「はい。そうつながるんです。残念でした」
アインは益々ブンむくれた。パイさんの美的感覚から言うとギリギリ最低ラインという目黒義和の容姿は30代前半の高等生物の雄。そういう子供っぽい仕草をすると、いささか違和感がないでもない。
「最初、ファングの嫌がらせかと思った」
「まぁ! 私の?」
「オレが……ファングを艦から追い出したから」
「オゼンが私に『嫉妬心』なんて面倒くさい感情を組み込んでると思います?」
「そりゃそうだけどさ。タイミングがヒドイ。意地悪。そうでなかったら、パイの陰謀か?」
「あんまりそういうこというと、発注を反故にされますよ」
「んじゃ、今のオフレコで」
「大丈夫です。アインには皆さん気を許してらっしゃいますから、数日くらいなんてことないですよ」
私は両手を合わせて微笑んだ。