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文字数 1,093文字
ボックス席の一つに案内されると、ウララさんが2人のホステスに挟まれて座っていた。オレの顔を見て、一方のホステスが席を空ける。そこに座れってことか、と察した。
ウララさんは目をまん丸くしてオレを見上げていた。
「ええっ? アキラくん? 可愛すぎー」
「……おかしくない?」
程よい硬さのソファに掛けながらウララさんに印象を聞く。自分の判断より、ここは高等生物本人に評価してもらうべきだ、と思った。ウララさんはブンブンと顔を横に振った。
「全然女の子。いや、完全に『男の娘』? まぁいいわ。私の立つ瀬がないのは変わらないもの」
「あらあら、ウララちゃんだってカワイイわよ」
反対隣に座っていたホステスが、ぼんやりと光っている正体不明の飲み物をストローで吸い上げた。
「ウララちゃんとお知り合いなんてステキね。現役の時応援してたのよ。こうして直にお会いしてお話しできて、ホントに嬉しい。興奮するわ」
「オレも最近知り合ってその話聞いたんですよ。可愛くて強いってスゴイですよね」
まぁ確かにウララさんは他の雌に比べれば、ゴツ目? でも、そんなこと別に重要でも何でもない。見た目なんて、どうにだってなる。そう、今のオレみたいにな。
今夜は律子さんに「会わせたい人が居るから来い」と言われたのだった。ついでにウララさんも連れてこいって。どう言うことなんだか分からないが、撮影OKってことはオレ等の仕事がらみなんだろうと思う。
隣のウララさんは、ホステスと一緒に話題の化粧品の話をし始めた。ワイヤレスイヤホン型フォーカスから届く信号は、3Dカメラが問題なく稼働していることを示している。ウララさんとホステスの話を聞き流しながら、いつの間にか目の前に置いていかれたカクテルをマドラーでかき回していると、視界の隅に律子さんが入った。顔を上げると、律子さんがジェスチャーで付いてくるように促す。
「ごめん。呼ばれたみたい。ウララさん、楽しんでてね」
オレは立ち上がると、もたつくドレスの裾に辟易しながら律子さんの後に続いた。
律子さんは、あるボックス席の前で立ち止まった。先程ウララさんがいたボックスの倍くらい広い。奥に座っていたロマンスグレーの実業家風の男性が右手上げて挨拶をした。
「シムーちゃん、連れてきたわよ。この子が、アイン」
律子さんの紹介に、オレは目を剥いた。