十六

文字数 517文字

 (そう)の国に刑氏(けいし)という土地がある。(ひさき)(かしわ)(くわ)などの木に適しており、よく育っている。

 ところが、その一握り、二握りほどの木は、猿の止まり木を求める者がこれを切り取り、三抱え、四抱えもあるものは、広壮な家の棟木(むなぎ)を求める者がこれを切り取り、七抱えも八抱えもあるものは、棺の一枚板を求める貴人や富商などが切り取ってしまう。

 だから、これらの木は天寿を終えるものがなく、みな成長の途中で(おの)のために命を落とす始末である。これは有用であることが招く災難である。

 ところで、厄払いの祭りをする時に、白い(ひたい)をした牛や、上を向いた鼻を持つ豚、痔病(じびょう)のある人間は、犠牲(いけにえ)として相応しくないために、これらを川に連れて行って、沈めることはできない。

 これらのものが犠牲に向かないことは()(しゅく)がよく知っており、だからこそ不吉なものとされるのである。だが、このことこそ神人(しんじん)が大吉とするものにほかならない。

 ── 十四、十五と、ほぼ変わらぬ内容。

「災い転じて福と為す」とでもいうものか。
 そも、災いとは人間がつくるもの。であるならば、という話か。そんなもんでもないか。

 生贄(いけにえ)とは、まさに犠牲だよな。何のためのだよ。
 そんな気やすめより、そもそもの災厄を、災厄とするな、と?
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み