(8)
文字数 911文字
市役所内には……誰も居なくなっていた。
困った……。
「見習い君、ところでさ……変な奴を見なかったか?」
「変な奴ですか?」
「黒一色のコスプレしてる奴だ」
「ん〜、少なくとも僕は見ませんでしたね〜」
「ああ、気を付けろ……奴は俺達を狙っている。そして、俺達に連続殺人鬼の濡れ衣を着せようとしている」
「どこが濡れ衣だ?」
「濡れ衣は濡れ衣だ」
「これだけ人を殺しといてか?」
「必要な犠牲だ」
「おい、あんた、自分が連続殺人鬼通り越して虐殺犯だって自覚有るのか?」
「違う。殺しかも知れないが、虐殺じゃない」
「あのなぁ……どう違うんだ?」
「虐殺をするのは『正義の暴走』をやってる奴らだけだ。だが、俺達は『正義の暴走』なんてしない。俺達の中には『正義』なんて無いからな。有るのは……男らしい理性的で合理的な現実主義だけだ。はい、論破完了」
「なるほど、女にモテる秘訣が『女にモてたい』と云う気持ちを押さえる事であるように……現実主義者でいる秘訣は、自分を現実主義者だと思わない事な訳か」
「はいはい、男に論破された女は、いつでもヒスを起こして、わけのわかんね〜事を……ん?」
女?
いや、たしかに若い女の声だったが……えっと……?
「あ……あの……先輩……逃げて……僕が食い止めま……えっ?」
「お……おい……見習い君……あっ……」
見習い君の体には……チビのメスガキの「正義の味方」が撃ったテイザーガンが命中し……。
「残念でしたね……このスーツは防電……ん?」
「ウチでその技術を買い上げてもいいが……少しばかり、改良の余地は有るな」
ええええ?
あれあれあれあれあれ?
メスガキにテイザーガンで撃たれたのは……見習い君だった筈なのに……目の前に居るのは
いや、また姿が見習い君に変り……。
あれ、あれ、あれ?
「俺は、どっちの姿でも構わんが、ややこしいな……クソ」
だから、どうなってんだよ?
見習い君だか
そこに居たのは……見習い君でも