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文字数 1,215文字

 きっと「正義の味方」や、奴らを盲信する愚民どもは……俺達が死体と怪我人の山を築いた、と非難するだろう。
 だが、言うまでもなく、そんなのは不当な非難だ。
 繰り返すが、俺達に「正義」なんて無い。
 有るのは、現実主義だけだ。
 だから、何人もの警備員や市役所の職員が死んだり、怪我して動けなくなってるように見えても、あくまで、必要最小限の犠牲だ。
 無意味な虐殺をするのは身勝手な「正義」に取り憑かれた者どもだ。
 俺達は、理性的で合理的で現実的な大人の男だ。
 必要最小限の犠牲は出しても、虐殺なんてやる訳がない。
 つまり、俺達が大虐殺をやらかしてるように見えても……それは虐殺じゃないって事だ。
 はい、論破完了。
「き……君達ッ‼ な……何人殺せばッ‼ 気が済むんだッ‼」
 恐ろしい事に、この簡単な理屈を理解出来ない阿呆が、俺の親父の後釜として……次の市長になろうとしている。
 副市長の古賀は……俺達に連行されながらも、俺達を罵倒するのをやめなかった。
 どうやら、俺は重大な勘違いをしていたようだ。
 こいつが「正義の味方」どもの手先になったのは……「正義の味方」どもを恐れていたからでは無いのか? そんな事を思っていた。
 もし、そうなら、こいつには情けをかけてやるべきだろう。
 しかし、こいつは……俺達が出した「必要最低限の犠牲」を、まるで大虐殺のように非難し続けている。
 普通の人間なら、金玉が縮み上がり……あと数日は○△×が勃たなくなるような光景を見ても、俺達を罵倒するのをやめない。
 そうか……。
 こいつもまた、独り善がりな「正義」に取り憑かれた「正義の暴徒」だったのか。
 仕方ない……こいつにも「必要最低限の犠牲」に加わってもらうしか無いようだ。
 こんな奴が権力を握れば……自分の「正義」に従って、恐るべき暴走をするだろう。
 それを防ぐには……殺すしかない。
「そうか……こいつは単なる『正義の味方』どもの手先じゃないらしいな」
「お……おい……何を言ってる?」
「じゃあ、こいつは『正義の味方』についての重要な情報を知ってる可能性が高いですね」
「だから、何を言ってるんだ、君達はッ⁉」
 古賀は「見習い」の鋭い指摘にも白ばっくれていた。
「『正義の味方』を名乗るテロリストどもの情報を全て自白させて……それを撮影して動画サイトに流す。『正義の味方』どもの強みは……正体不明な事だ。正体がバレた『正義の味方』など、潰す手はいくらでも有る」
「いいっすね。でも、どうやって自白させます」
 待てよ……そうだ……良い手が有った。
「い……いや、ちょっと待て……。おい、そっちのデブの方のクリムゾン・サンシャイン……」
 古賀がまた何か言い出した。イチイチ、うるさい奴だ。
「何だ?」
「君の声に聞き覚えが有る気がしてたが……思い出したぞ」
「へっ?」
「たしか、市長の緒方さんの息子……ぎゃあああッ‼」
 俺は余計な事を言い掛けた古賀の息子を手で握り潰してやった。
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登場人物紹介

緒方一郎
行方不明になった「ヒーロー」であるクリムゾン・サンシャインのコスチュームを偶然手に入れた平凡な若者。
かつて自分を何度も助けてくれたクリムゾン・サンシャインの代りに戦いに身を投じ、クリムゾン・サンシャインの行方を追うが……。
※あくまで本人主観であり、作品中の「真実」とは異なる可能性が有ります。

緒方正一
福岡県久留米市(あくまで現実ではなく作品の舞台になってる平行世界の)の市長。
かつては、富士山の噴火によって大量発生した「関東難民」を排斥していたが、久留米市を「福岡県3番目の政令指定都市」にする為、現在では「関東難民」積極受け入れ派になっている。
ある意味で「息子をネトウヨに育てた癖に、自分だけネトウヨを『卒業』した」と云うイロイロアレアレな人物。
※くどいようですが、作品の舞台になってる「平行世界の地球の福岡県久留米市」と云う設定の架空の場所の話における架空の人物であり、本作品の執筆開始以降(2021年4月以降)、この人を連想させるような福岡県久留米市もしくは他の地方自治体の市長・首長が誕生したとしても、偶然の一致に過ぎません。

関根優斗
「関東難民」だが、かつて「関東難民」排斥派だった緒方正一の娘婿になり、正一の実の息子を差し置いて、後継者と見做されるようになった男。

ニルリティ
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの若きリーダー。
強敵と戦う際には強化服「護国軍鬼4号鬼」を着装するが、生身でもかなりの腕前の持ち主。
なお「ヒーローとしての名前」である「ニルリティ」は、インド神話の悪鬼の一族「羅刹」の別名と云うヒーローらしからぬもの。

ソルジャー・ブルー
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
異常に高い身体能力を持ち、軍隊式らしき戦闘術を使う。
強敵と戦う際には強化服「護国軍鬼5号鬼」を着装する。
しゃべり方に若干の「外人訛り」が有り、女性としては高めの身長(170cm以上)。

ヴァルナ
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
通常の「魔法」「超能力」とは異なるらしい「水を操る力」の持ち主。
「単純に途方も無い力を持っているのみならず『出来る事の範囲』が異様に広い」規格外の能力の持ち主だが、裏を返せば「ほんの少しのミスで地形を変えかねない」ほどの存在である為、「強力過ぎて逆に使える状況が限られる」ヒーロー。

ファイアリー・エンジェル
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
通常の「魔法」「超能力」とは異なるらしい「炎や熱を操る力」の持ち主。
ただし、ヴァルナほどでは無いが「強力過ぎて逆に使える状況が限られる」らしく、前線に出る事は稀。
「機械仕掛けの天使/聖騎士」をイメージしたプロテクターを身に付けているが、そのプロテクターには、偶然にも、後述する「永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)」のプロテクターに刻まれている旧約聖書の一節の本来の文章「神の御怒りは束の間に過ぎず、神の恩寵は生涯に渡り続く。涙の夜は必ず明け、喜びの朝が来るだろう」が英語で刻まれている。

クリムゾン・サンシャイン
御当地ヒーローチームに所属しない一匹狼のヒーロー。
白いプロテクターと旭日旗をイメージした覆面を着装している。
超身体能力と高速治癒能力を誇るが、似た能力を持つ「ソルジャー・ブルー」に比べると、高速治癒能力では上回るが、身体能力や技量では劣る。
「御当地ヒーローの暴虐から一郎達を護ってくれていた」(※:あくまで一郎視点)が、ある日、突然、行方不明になる。

永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)
クリムゾン・サンシャインの行方を探す一郎の前に立ちはだかる謎の悪漢(ヴィラン)。
黒いプロテクターと黒い覆面を着装し、そのプロテクターには、旧約聖書の詩篇の一節を逆転させた「神の慈悲など有っても束の間に過ぎず、人間の怒りは永遠に消えない。涙の夜は終る事なく、喜びの朝など来る筈は無い」と云う言葉がドイツ語で刻まれている。
「真紅の夕日が沈んだ後に来る、明ける事なき夜」を自称し、一郎の友人達を次々と手にかけ、一郎を孤立させてゆく。

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