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文字数 1,800文字

『またしても、久留米市を中心に活動していた独立系御当地ヒーロー「クリムゾン・サンシャイン」のコスプレをした者による殺人事件が発生しました。被害者は久留米市市議会議員の古川亮さんと、その御家族の計6人です。なお、被害者の御自宅の監視カメラの映像から、ここ数件の事件の犯人とは明らかに体型が違い……』
 クソ……嘘だろう……。
 「正義の暴徒」どもは……自分達と敵対していたクリムゾン・サンシャインの評判を地に堕とすと同時に……自分達の邪魔になる俺の味方を排除する……そんな一挙両得の手段を取り始めたようだ……。
「あ……あの……このままじゃ次に狙われるのは……」
 ネット配信の地域ニュースを観ながら、選挙事務所の警備顧問である猿渡のおっちゃんは、真っ青な顔になっていた。
「親父達だな……」
「じゃあ……」
『次のニュースです。福岡県警久留米署と、複数の広域警察の久留米支局で、警察官がストライキを始めました』
 はぁっ?
『ストライキを起こした警察官の代表は、久留米市内では、ここ数日、警察上層部による不可解かつ理不尽な命令が相次ぎ、それにより死傷者も出ており、警察上層部が納得のいく説明を行なうまで業務を遂行する事が出来ない、と発表しています』
「やったぞ、これで俺の家族を護る者は居なくなった」
「あ……あの……な……なにを言って……?」
「古川のおっちゃんを殺したのが、俺を狙っているアイツ……あの『永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)』なんて中二病な名前を名乗ってる『正義の味方』なら、奴は俺を最後に殺すとか言っていた。なら、次に死ぬのは俺の家族だ。親父も死ぬ。クソ義弟(おとうと)も死ぬ。万が一、親父が正気に戻るか、これまた万が一、クソ義弟(おとうと)が回復したら、俺の次期市長の座が脅かされる。だが……俺を狙ってる奴が、わざわざ、俺に都合の悪い奴らを始末してくれるだろう。馬鹿め、俺に何の恨みが有るか知らないが……お前が何をしようと、全て俺の手の上で踊る哀れな猿だ」
「あ……あんたねぇ……」
「それは、そうと……何で、後援会の皆さんは、誰も来てない?」
「みんな、副市長の古賀さんに付きましたよ」
「何でだっ⁉」
「何でもクソも、何で、誰もあんたを応援しない理由が判んねえんだよッ⁉」
 そ……そんな……何て事だ……。
 きっと……親父の後援会の皆さんまで……あの恐るべき「正義の暴徒」どもに……洗脳されてしまったのか?
 マズい……ならば、次の手段は……。
『臨時ニュースが入りました。先頃「御当地ヒーロー」により壊滅させられた暴力団「安徳グループ」の残党を名乗る集団が、佐賀県唐津市内の老人ホームを占拠しました』
「へっ?」
『ネット上の動画サイトで犯行声明と見られるものが公開されましたので、こちらでも流させていただきます』
「な……なんだ? どうなってる?」
「ま……まさか……」
 猿渡のおっちゃんの顔から更に血の気が引き……。
「おい、心当りが有るのか?」
『安徳ホールディングスの元副CEOの酒村孝太郎と申します。皆様、御存知の通り、我が安徳ホールディングスおよび関連会社の実態は、いわゆるヤクザ・暴力団でした。それについては潔く認めます。しかし、残念ながら、我々に覚えのない罪まで、我が安徳グループの関係者に着せている者が居ます。それも警察関係者の中に』
 えっと……何が起きてんだ?
『福岡県警の本部長殿。御存知の通り、我々が占拠した老人ホームには貴殿の御母堂様が入所されていらっしゃいます。親御さんの命が大事であれば、我々に濡れ衣を着せている、以下の3つの事件の真犯人を二四時間以内に逮捕していただきたい。1つ、久留米市内のミニコミ誌の編集者失踪事件。1つ、久留米市市長の娘さん御夫婦の拉致監禁事件。1つ久留米市副市長の娘さんの失踪事件』
「えっと……どう言う事?」
「あ……あのねえ……何、呑気な表情(ツラ)してんですか? 全部、あんたがやらかしたけど、俺が元の職場に働きかけて、あいつらに濡れ衣着せた事件でしょう」
「あ……あんたこそ、何言ってんだ? 俺は何1つやってね〜ぞ。大体、何で、ヤクザの残党が、県警のエラいさんのお袋さんが、どこに居るかなんて事を知ったんだ?」
「あのねえ、まだ、気付かないんですか?」
「何を?」
「あんたが、散々利用した、警察上層部の個人情報のデータベースですけどね……」
「それが、どうした?」
「あれを最初に作ったのは……あいつら……安徳グループなんですよっ‼」
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登場人物紹介

緒方一郎
行方不明になった「ヒーロー」であるクリムゾン・サンシャインのコスチュームを偶然手に入れた平凡な若者。
かつて自分を何度も助けてくれたクリムゾン・サンシャインの代りに戦いに身を投じ、クリムゾン・サンシャインの行方を追うが……。
※あくまで本人主観であり、作品中の「真実」とは異なる可能性が有ります。

緒方正一
福岡県久留米市(あくまで現実ではなく作品の舞台になってる平行世界の)の市長。
かつては、富士山の噴火によって大量発生した「関東難民」を排斥していたが、久留米市を「福岡県3番目の政令指定都市」にする為、現在では「関東難民」積極受け入れ派になっている。
ある意味で「息子をネトウヨに育てた癖に、自分だけネトウヨを『卒業』した」と云うイロイロアレアレな人物。
※くどいようですが、作品の舞台になってる「平行世界の地球の福岡県久留米市」と云う設定の架空の場所の話における架空の人物であり、本作品の執筆開始以降(2021年4月以降)、この人を連想させるような福岡県久留米市もしくは他の地方自治体の市長・首長が誕生したとしても、偶然の一致に過ぎません。

関根優斗
「関東難民」だが、かつて「関東難民」排斥派だった緒方正一の娘婿になり、正一の実の息子を差し置いて、後継者と見做されるようになった男。

ニルリティ
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの若きリーダー。
強敵と戦う際には強化服「護国軍鬼4号鬼」を着装するが、生身でもかなりの腕前の持ち主。
なお「ヒーローとしての名前」である「ニルリティ」は、インド神話の悪鬼の一族「羅刹」の別名と云うヒーローらしからぬもの。

ソルジャー・ブルー
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
異常に高い身体能力を持ち、軍隊式らしき戦闘術を使う。
強敵と戦う際には強化服「護国軍鬼5号鬼」を着装する。
しゃべり方に若干の「外人訛り」が有り、女性としては高めの身長(170cm以上)。

ヴァルナ
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
通常の「魔法」「超能力」とは異なるらしい「水を操る力」の持ち主。
「単純に途方も無い力を持っているのみならず『出来る事の範囲』が異様に広い」規格外の能力の持ち主だが、裏を返せば「ほんの少しのミスで地形を変えかねない」ほどの存在である為、「強力過ぎて逆に使える状況が限られる」ヒーロー。

ファイアリー・エンジェル
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
通常の「魔法」「超能力」とは異なるらしい「炎や熱を操る力」の持ち主。
ただし、ヴァルナほどでは無いが「強力過ぎて逆に使える状況が限られる」らしく、前線に出る事は稀。
「機械仕掛けの天使/聖騎士」をイメージしたプロテクターを身に付けているが、そのプロテクターには、偶然にも、後述する「永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)」のプロテクターに刻まれている旧約聖書の一節の本来の文章「神の御怒りは束の間に過ぎず、神の恩寵は生涯に渡り続く。涙の夜は必ず明け、喜びの朝が来るだろう」が英語で刻まれている。

クリムゾン・サンシャイン
御当地ヒーローチームに所属しない一匹狼のヒーロー。
白いプロテクターと旭日旗をイメージした覆面を着装している。
超身体能力と高速治癒能力を誇るが、似た能力を持つ「ソルジャー・ブルー」に比べると、高速治癒能力では上回るが、身体能力や技量では劣る。
「御当地ヒーローの暴虐から一郎達を護ってくれていた」(※:あくまで一郎視点)が、ある日、突然、行方不明になる。

永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)
クリムゾン・サンシャインの行方を探す一郎の前に立ちはだかる謎の悪漢(ヴィラン)。
黒いプロテクターと黒い覆面を着装し、そのプロテクターには、旧約聖書の詩篇の一節を逆転させた「神の慈悲など有っても束の間に過ぎず、人間の怒りは永遠に消えない。涙の夜は終る事なく、喜びの朝など来る筈は無い」と云う言葉がドイツ語で刻まれている。
「真紅の夕日が沈んだ後に来る、明ける事なき夜」を自称し、一郎の友人達を次々と手にかけ、一郎を孤立させてゆく。

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