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文字数 1,214文字

 あああああ〜ッ‼
 くそ、くそ、くそ……。
 これだから、「正義は必ず暴走する」「自分の正義を盲信する奴は、どこまでも残酷になれる」とか言われてるんだッ‼
 あの「正義の味方」を名乗る暴徒どもは……独り善がりな「正義」に取り憑かれ……世にも恐しい真似をしやがった。
 俺を助けるフリをして……あの時、俺が携帯電話(ブンコPhone)を落したのに、何も言わなかったのだ。
 ちくしょう……「正義の暴徒」どもによる俺への包囲網はどんどん狭まりつつある。
 何とか……しなければ……なんとか……。
「あの〜、緒方さん。緒方さんの携帯電話(ブンコPhone)、見付かりましたけど……」
 何とかマンションに戻ると、山下がそう言い出した。
「へっ?」
「ここです」
 山下は、自分の携帯電話(ブンコPhone)の画面を見せる。
「ちょっと待て、ここって……? よし、今から行くぞ」
「い……いや、待って下さい、もうすぐ夜の一一時っすよ」
「うるさい。行くぞ、車を出せ」
 そして、車の運転を快諾してくれた山下と共に、俺の携帯電話(ブンコPhone)のGPSが指し示している場所に向かった。
「あ……あの……何で、あそこで落した緒方さんの携帯電話(ブンコPhone)が、ここに有るんですか?」
「古川のおっちゃんが拾ってくれたんだろ」
「い……いや、どうやって?」
「でも、ここに有るんだろ。それ以外、考えられない」
「でも……」
「だから、古川のおっちゃんに話を聞けば、全て判る筈だ」
「あ……あの……どちら様ですか?」
 何故か、俺が落した携帯電話(ブンコPhone)が有るらしい場所……。
 それは、市長(親父)派の市議会議員の中の長老格である古川のおっちゃんの自宅だった。
 だが、当の古川のおっちゃんの家の前で、車から降りた俺達に背後(うしろ)から声をかけた者が居た。
「そっちこそ、先に名乗……ん?」
 一瞬、お巡りかと思った。
 だが、そいつらの片方が着ている制服は……警察のものに似ているが、ビミョ〜に違う。
 そして、警官の制服に似てる服を着てる奴以外に、もう1人。
 こっちは作業着みたいな服装だ。
「警備会社の者です。詳細は言えませんが、この近辺で、ウチの会社と契約してるお宅で異変が起きた可能性が……」
「異変って何だ?」
「会社の規則により言えません」
「そうか……」
「で、貴方がたこそ、どなたですか?」
「俺は、この久留米市の次期市ちょ……」
「あああああッ‼」
 何故か、山下が大声で俺の声を遮る。
「何だ、おい?」
「何なんですか?」
「あ……あの……この市の市長の選挙事務所の者で、この辺りに住んでる市会議員の(かた)に用事が……」
「その市会議員って、古川亮さんでしょうか?」
「へっ?」
「あの……何で、こんな時間に、市長さんの選挙事務所の方が……」
「あ……あの、ウチの事務所の者が、市会議員の古川さんのお宅に携帯電話(ブンコPhone)を忘れてしまって、取りに来たんです……は……はい」
 おい、山下、山下のクセに、何、俺に無断で話を進めてる?
「えっと……あの……お宅で異変が起きた可能性が有るお客様は……その……市議会議員の古川さんなんですが……」
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登場人物紹介

緒方一郎
行方不明になった「ヒーロー」であるクリムゾン・サンシャインのコスチュームを偶然手に入れた平凡な若者。
かつて自分を何度も助けてくれたクリムゾン・サンシャインの代りに戦いに身を投じ、クリムゾン・サンシャインの行方を追うが……。
※あくまで本人主観であり、作品中の「真実」とは異なる可能性が有ります。

緒方正一
福岡県久留米市(あくまで現実ではなく作品の舞台になってる平行世界の)の市長。
かつては、富士山の噴火によって大量発生した「関東難民」を排斥していたが、久留米市を「福岡県3番目の政令指定都市」にする為、現在では「関東難民」積極受け入れ派になっている。
ある意味で「息子をネトウヨに育てた癖に、自分だけネトウヨを『卒業』した」と云うイロイロアレアレな人物。
※くどいようですが、作品の舞台になってる「平行世界の地球の福岡県久留米市」と云う設定の架空の場所の話における架空の人物であり、本作品の執筆開始以降(2021年4月以降)、この人を連想させるような福岡県久留米市もしくは他の地方自治体の市長・首長が誕生したとしても、偶然の一致に過ぎません。

関根優斗
「関東難民」だが、かつて「関東難民」排斥派だった緒方正一の娘婿になり、正一の実の息子を差し置いて、後継者と見做されるようになった男。

ニルリティ
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの若きリーダー。
強敵と戦う際には強化服「護国軍鬼4号鬼」を着装するが、生身でもかなりの腕前の持ち主。
なお「ヒーローとしての名前」である「ニルリティ」は、インド神話の悪鬼の一族「羅刹」の別名と云うヒーローらしからぬもの。

ソルジャー・ブルー
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
異常に高い身体能力を持ち、軍隊式らしき戦闘術を使う。
強敵と戦う際には強化服「護国軍鬼5号鬼」を着装する。
しゃべり方に若干の「外人訛り」が有り、女性としては高めの身長(170cm以上)。

ヴァルナ
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
通常の「魔法」「超能力」とは異なるらしい「水を操る力」の持ち主。
「単純に途方も無い力を持っているのみならず『出来る事の範囲』が異様に広い」規格外の能力の持ち主だが、裏を返せば「ほんの少しのミスで地形を変えかねない」ほどの存在である為、「強力過ぎて逆に使える状況が限られる」ヒーロー。

ファイアリー・エンジェル
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
通常の「魔法」「超能力」とは異なるらしい「炎や熱を操る力」の持ち主。
ただし、ヴァルナほどでは無いが「強力過ぎて逆に使える状況が限られる」らしく、前線に出る事は稀。
「機械仕掛けの天使/聖騎士」をイメージしたプロテクターを身に付けているが、そのプロテクターには、偶然にも、後述する「永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)」のプロテクターに刻まれている旧約聖書の一節の本来の文章「神の御怒りは束の間に過ぎず、神の恩寵は生涯に渡り続く。涙の夜は必ず明け、喜びの朝が来るだろう」が英語で刻まれている。

クリムゾン・サンシャイン
御当地ヒーローチームに所属しない一匹狼のヒーロー。
白いプロテクターと旭日旗をイメージした覆面を着装している。
超身体能力と高速治癒能力を誇るが、似た能力を持つ「ソルジャー・ブルー」に比べると、高速治癒能力では上回るが、身体能力や技量では劣る。
「御当地ヒーローの暴虐から一郎達を護ってくれていた」(※:あくまで一郎視点)が、ある日、突然、行方不明になる。

永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)
クリムゾン・サンシャインの行方を探す一郎の前に立ちはだかる謎の悪漢(ヴィラン)。
黒いプロテクターと黒い覆面を着装し、そのプロテクターには、旧約聖書の詩篇の一節を逆転させた「神の慈悲など有っても束の間に過ぎず、人間の怒りは永遠に消えない。涙の夜は終る事なく、喜びの朝など来る筈は無い」と云う言葉がドイツ語で刻まれている。
「真紅の夕日が沈んだ後に来る、明ける事なき夜」を自称し、一郎の友人達を次々と手にかけ、一郎を孤立させてゆく。

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