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文字数 1,273文字
判ってみれば……簡単な事だったのだ。
「そうかッ‼ 二重人格で、今、2つの人格が統合されたんだなッ‼」
「阿呆かっ‼」
「安いラノベかマンガの読み過ぎだッ‼」
俺は、「正義の暴徒」のメスガキと……何と呼べばいいのか判らない灰色のヤツから、同時に罵声を浴びた。
何て事だ……見習い君と
俺に罵声を浴びせてるのが、その証拠だ。
「単に表面の色や模様を一瞬で変える機能が有る素材で出来たスーツだ。Q大工学部のある大学院生が研究をしていたモノだ」
「じゃあ……その……」
いや、わからない。
わからない。
いみが……?
なにが……どうなって……?
おれは……いもうとよりあたまがいいはずだ。
なのに、なぜ、なにもわからない?
ひょっとして、おれは、ばかなのか?
おれがはいれたのがさんりゅうだいがくで、いちろうにりゅうしたのに……いもうとは……いいだいがくを……すとれーとではいってりゅうねんなしでそつぎょうした……。
ひょっとして……くそいもうとのほうが……おれよりできがよかったのか?
そんなはずはない……。
おやじのあとをついでしちょうになるのはおれだ。
おれのはずだ……。
なのに……。
あれ?
なんとよんだらいいか、よくわかんない、はいいろのやつはにげだし……。
そのあとを、ちびのめすがきがおいかけ……。
ああ、おれもにげなきゃ……。
ん?
なにがおきた?
からだがうごかない……。
あ、せいぎのぼうとのいちみの……ぱわーどすーつのまほうつかいだ……。
くそ……あいつがなにか……まほうをつかって……。
あ……おまわりさんがきた……。
きてくれた……。
おまわりさん……はやく……せいぎのぼうそうをしてるくそどもをつかまえ……あれ?
なんで、おれにてじょうをかけるんだよ?
おまわりさんがおれのなまえをきいてる。
おがたいちろう。
おがたいちろう。
くるめしちょうこうほの……おがたいちろうに……きよきいっぴょうを……。
でも……ほんとうは……いちろうってなまえもいやなんだよな……。
「うがあああッ‼ 誰が……一浪二留三流大学だッ‼ クソッ‼ 妹の癖に俺よりいい大学に行きやがってッ‼ 殺す殺す殺す殺す深雪、殺してやるッ‼」
「阿呆っ‼ 深雪さんは、もうお前が殺してるだろうが……ッ‼ あと、警官が言った事を聞いてなかったのかっ? あの……もう一度言ってやって下さい」
「は……はぁ……。では、君を、本日、久留米市役所内で起きた連続殺人事件の容疑者として現行犯逮捕した。君には黙秘権が有る。君には弁護士を雇う権利が有り、弁護士費用がなければ公費で弁護士を雇う事が出来る。以後の発言は法廷で不利な証拠となる可能性が有るので、発言には注意するように。また、君は、今述べた逮捕容疑以外の容疑でも取調べを受ける可能性が有る。なお、先程の妹さんへの殺意が有るとしか解釈出来ない発言は、既に録音されており、裁判の際の証拠として使われる可能性が有るので、あしからず」