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文字数 971文字
「おい、選挙管理委員会はどこだ? 市長選挙の立候補に来た」
「え……えっと……」
「怪しい者じゃありません。警備員も警察も『御当地ヒーロー』も呼ぶ必要は有りません、いいですね?」
俺の
「は……はい……あの……」
何故か、市役所の案内係は……何階のどこそこです、と云う一言で済む話を終えるまでに、何回も言い間違えた。
クリムゾン・サンシャインはサイコパスなのに頭の手際も悪い……そのせいで、下手に手際がいい連続殺人鬼より遥かに陰惨な事件をどんどん起こしている危険人物だ……そんな「正義の味方」どものプロパガンダを信じてしまった馬鹿どもが多く居るようだ。
困った事だ。
俺が市長になったら、市の予算で啓蒙活動を行なう事にしよう。
そして、市役所の前に「正義の暴徒」どもとは違う「正義の暴走」とは無縁な「真のヒーロー」である初代クリムゾン・サンシャインの銅像建てるのだ。
「はい、我々は市長選挙の立候補に来ただけです。皆さんが警備員・警察・『御当地ヒーロー』などを呼ばない限りは、皆さんに危害を加えるつもりは有りません」
「見習い」は市役所内に居る市民や職員にそう声をかけ続けた。
そして、選挙管理委員会が市長選挙の立候補の受け付けをやってる部屋まで辿り着き……ドアを開けると……。
「おい……何で、お前がここに居る?」
「そ……その声は……やっぱり、兄貴?」
かつて、俺の親父の後援会の関係者だった裏切り者どもを引き連れて、立候補の手続きをやろうとしていたのは……。
「だから、あたしが立候補したって誰も投票しない、って何度も言ったんですよッ‼ 悲しいけど……あたしは、このロクデナシの犯罪者の妹なんですからッ‼」
俺のクソ妹は……俺を指差して……そう叫んだ。
「い……いや……その……そう言われましても……その……」
親父の後援会の元会長は……顔に脂汗を浮かべながら……俺のクソ妹に何か言い訳をしようとしている……らしかったが……極度の混乱状態で、何をどう言えばいいのか、自分でも判っていないように見えた。
「あと、すぐに、警備員・警察・『御当地ヒーロー』全部まとめて呼んで、ウチの馬鹿兄貴を逮捕して下さいッ‼」