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文字数 1,005文字

「阿呆か、てめえ……何で、警官殺しやがったッ⁉」
 もう夜だった。
 互いに憎み合っている筈の……俺と永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)は……久留米市内を一緒に逃亡し続けていた。
 俺は……警官に投降したって、どっちみち、極刑間違い無しの真似を……えっと、待て、あれ、俺がやったんだっけ?
 何か冤罪を晴らす方法は……?
 まぁ、いいや。
 けど、困った事に永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)はそうじゃなくて……俺達を見付けた警官を瞬殺しやがったが……。
 そして、殺した後に、警官が小型カメラを付けてた事を発見。
 どこをどう見ても……永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)が俺の逃亡を手助けしているようにしか見えない映像が、警察署に送信されてしまっていたのだ。
「その質問、何度目だ?」
「何度聞いても、納得出来る答が返ってきてねえんでなッ‼」
「うるせえ、お前と違って、俺には、まだ人生やりなおすチャンスが有るんだよッ‼ こんな所で警官に捕まってたまるかッ‼」
「はぁ? 俺を連続殺人鬼に仕立て上げといて、自分は人生やりなおす気かッ⁉ このクソ野郎がッ‼」
「なんだと?」
「おい、知ってるか『銃で人を撃っていいのは、撃たれる覚悟が有る奴だけだ』ってのを。お前、人を罪に陥れといて、自分だけ助かる気か?」
「はぁ? お前、『正義の暴走』もそうだけど、SNSで覚えたフレーズを意味も判らず使う癖が有るだろ、マヌケ」
「誰がマヌケだ?」
「『銃で人を撃っていいのは、撃たれる覚悟が有る奴だけだ』ってお前が言うと超笑えるぞ。丸腰の実の妹を銃殺しやがった鬼畜野郎は、どこのどいつだ?」
「う……うるせえ……」
「大体、俺がお前を罪に陥れただと? おい、お前がやった殺しの中に、何件、俺と関わりないのが有ると思ってるんだ?」
「うるせえ……」
「ほ〜ら、反論のレパトリーが尽き……やめた……お前と話してると俺まで馬鹿になる」
「なんだと……」
「恐かったんだぞ……『見習い君』を演じてた時は……お前を騙したけりゃ、お前並の馬鹿を演じなきゃいけなかったが……その馬鹿の仮面が、その内、顔から外れなくなる気がしてな……」
 俺達は……いつの間にか……ある団地に辿り着いていた。
 そう言や……。
「あ……そう言や……ここから全てが始まったんだよな……」
「覚えてたのか……」
「まあな……」
「じゃあ……すまないが……お前のせいで酷い目に遭った奴が居る……。そいつは、もう死んでるが……手の1つも合わせてやってくれ……そうすれば、お前を許せるかも知れない」
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登場人物紹介

緒方一郎
行方不明になった「ヒーロー」であるクリムゾン・サンシャインのコスチュームを偶然手に入れた平凡な若者。
かつて自分を何度も助けてくれたクリムゾン・サンシャインの代りに戦いに身を投じ、クリムゾン・サンシャインの行方を追うが……。
※あくまで本人主観であり、作品中の「真実」とは異なる可能性が有ります。

緒方正一
福岡県久留米市(あくまで現実ではなく作品の舞台になってる平行世界の)の市長。
かつては、富士山の噴火によって大量発生した「関東難民」を排斥していたが、久留米市を「福岡県3番目の政令指定都市」にする為、現在では「関東難民」積極受け入れ派になっている。
ある意味で「息子をネトウヨに育てた癖に、自分だけネトウヨを『卒業』した」と云うイロイロアレアレな人物。
※くどいようですが、作品の舞台になってる「平行世界の地球の福岡県久留米市」と云う設定の架空の場所の話における架空の人物であり、本作品の執筆開始以降(2021年4月以降)、この人を連想させるような福岡県久留米市もしくは他の地方自治体の市長・首長が誕生したとしても、偶然の一致に過ぎません。

関根優斗
「関東難民」だが、かつて「関東難民」排斥派だった緒方正一の娘婿になり、正一の実の息子を差し置いて、後継者と見做されるようになった男。

ニルリティ
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの若きリーダー。
強敵と戦う際には強化服「護国軍鬼4号鬼」を着装するが、生身でもかなりの腕前の持ち主。
なお「ヒーローとしての名前」である「ニルリティ」は、インド神話の悪鬼の一族「羅刹」の別名と云うヒーローらしからぬもの。

ソルジャー・ブルー
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
異常に高い身体能力を持ち、軍隊式らしき戦闘術を使う。
強敵と戦う際には強化服「護国軍鬼5号鬼」を着装する。
しゃべり方に若干の「外人訛り」が有り、女性としては高めの身長(170cm以上)。

ヴァルナ
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
通常の「魔法」「超能力」とは異なるらしい「水を操る力」の持ち主。
「単純に途方も無い力を持っているのみならず『出来る事の範囲』が異様に広い」規格外の能力の持ち主だが、裏を返せば「ほんの少しのミスで地形を変えかねない」ほどの存在である為、「強力過ぎて逆に使える状況が限られる」ヒーロー。

ファイアリー・エンジェル
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
通常の「魔法」「超能力」とは異なるらしい「炎や熱を操る力」の持ち主。
ただし、ヴァルナほどでは無いが「強力過ぎて逆に使える状況が限られる」らしく、前線に出る事は稀。
「機械仕掛けの天使/聖騎士」をイメージしたプロテクターを身に付けているが、そのプロテクターには、偶然にも、後述する「永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)」のプロテクターに刻まれている旧約聖書の一節の本来の文章「神の御怒りは束の間に過ぎず、神の恩寵は生涯に渡り続く。涙の夜は必ず明け、喜びの朝が来るだろう」が英語で刻まれている。

クリムゾン・サンシャイン
御当地ヒーローチームに所属しない一匹狼のヒーロー。
白いプロテクターと旭日旗をイメージした覆面を着装している。
超身体能力と高速治癒能力を誇るが、似た能力を持つ「ソルジャー・ブルー」に比べると、高速治癒能力では上回るが、身体能力や技量では劣る。
「御当地ヒーローの暴虐から一郎達を護ってくれていた」(※:あくまで一郎視点)が、ある日、突然、行方不明になる。

永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)
クリムゾン・サンシャインの行方を探す一郎の前に立ちはだかる謎の悪漢(ヴィラン)。
黒いプロテクターと黒い覆面を着装し、そのプロテクターには、旧約聖書の詩篇の一節を逆転させた「神の慈悲など有っても束の間に過ぎず、人間の怒りは永遠に消えない。涙の夜は終る事なく、喜びの朝など来る筈は無い」と云う言葉がドイツ語で刻まれている。
「真紅の夕日が沈んだ後に来る、明ける事なき夜」を自称し、一郎の友人達を次々と手にかけ、一郎を孤立させてゆく。

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