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文字数 1,353文字

 何故……こんな事になってしまったんだ?
 俺達は……「関東難民」が多く住んでいる団地に……穏当な交渉に出掛けただけだった。
 万が一の事を考えて、「正義の味方」どもの「正義の暴走」を止める事に賛同してくれた善良な警官の皆さんを待機させていたが……それが、何故……?
『またお前ら……ん? おい、後方支援チーム、見えてるか? いつもの連中だけど、市長の馬鹿息子だけ居ないぞ』
 例によって、俺達の行動は「正義の味方」を名乗る暴徒どもに筒抜けだった。
 SNSや動画サイトで散々宣伝をしたせいだ。
 そこまでは順調だった。
 奴らは……俺達が関東難民が多く住む団地に行って、関東難民達を迫害すると思っている。
 とんだ勘違いだ。
 俺達が関東難民をうっかりブチ殺しても「穏当な交渉中の刑事罰に問う程でもない事故」だが、関東難民どもが自分や仲間の身を護ろうとして俺達に石コロ1つでも投げれば極刑に処すべき犯罪だ。
 これは、あまりにも明らかな事だ。大宇宙の真理だ。
 だが、「正義の暴走」をしている奴らは、この単純明快な事が理解出来なくなっている。
 これこそが……「正義の暴走」の恐しさだ。
 今日来た「正義の味方」どもは……数が少ないな……。
 強化服(パワードスーツ)の「魔法使い」に獣化能力者が2人。
「古川さん、警官隊を突入させて」
『わ……わかった……』
 俺は古川のおっちゃんに連絡。
 俺達は県警といくつかの広域警察の幹部達の弱味を握ってる……じゃなかった警察の皆さんと理性的で合理的で現実的な大人の男同士の会話をした結果、「正義の暴走」を行なっている「正義の味方」どもは皆殺しにすべきだと云う点で同意する事が出来た。
 そして、「正義の味方」を名乗るテロリストどもが治安維持の一端を担っているのは……単にここ二十数年ほどの間にズルズルと「社会の慣習」と化してしまった事に過ぎず、法的根拠は無い。
 ならばやるべき事は1つだ。
 「正義の暴走」を止められるのは、理性的で合理的な大人の男の現実主義だけだ。
 奴らを、その場で射殺……ん?
 遅い。
 いつに成ったら、警察が動くんだ?
『おい、今日はやけに大人しいな。何もする気が無いのか?』
『え……えっと……その……』
 俺の仲間が配信してる動画の中では……「正義の暴徒」と俺の仲間達が……妙に呑気な会話を交していた。
『何もする気が無いなら、さっさと帰れ』
『ど……どうしようか?』
『え……えっと……』
『何かを待ってるのか?』
 し……しまった……。今回は警察が協力している事まで、奴らにバレていた。
「古川さん、すぐに警官隊を突入させて……すぐにっ‼」
『わ……わかった……』
 し……しまった……。
 警官隊への指示は……俺→古川のおっちゃん→警察幹部→現場の居る警官隊の指揮官の上司→現場に居る警官隊の指揮官、と回り道をしまくって伝わる事になる。
 俺が指示を出しても、警官隊はすぐには動けない。
 仕方ない。
 俺は現場の近くに止めていた車を出て、走り出し……。
 走る。
 走る。
 走る。走る。走る。走……すぐに息切れ。
 こける。
 あれ?
 一瞬、気を失なったのか?
 ああ……そう言えば、去年の健康診断で高血圧とか言われてた……。
 そして……気付いた時……。
 嘘だ。
 悪夢だ。
 冗談だろ?
 何故……こんな事になってしまったんだ?
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登場人物紹介

緒方一郎
行方不明になった「ヒーロー」であるクリムゾン・サンシャインのコスチュームを偶然手に入れた平凡な若者。
かつて自分を何度も助けてくれたクリムゾン・サンシャインの代りに戦いに身を投じ、クリムゾン・サンシャインの行方を追うが……。
※あくまで本人主観であり、作品中の「真実」とは異なる可能性が有ります。

緒方正一
福岡県久留米市(あくまで現実ではなく作品の舞台になってる平行世界の)の市長。
かつては、富士山の噴火によって大量発生した「関東難民」を排斥していたが、久留米市を「福岡県3番目の政令指定都市」にする為、現在では「関東難民」積極受け入れ派になっている。
ある意味で「息子をネトウヨに育てた癖に、自分だけネトウヨを『卒業』した」と云うイロイロアレアレな人物。
※くどいようですが、作品の舞台になってる「平行世界の地球の福岡県久留米市」と云う設定の架空の場所の話における架空の人物であり、本作品の執筆開始以降(2021年4月以降)、この人を連想させるような福岡県久留米市もしくは他の地方自治体の市長・首長が誕生したとしても、偶然の一致に過ぎません。

関根優斗
「関東難民」だが、かつて「関東難民」排斥派だった緒方正一の娘婿になり、正一の実の息子を差し置いて、後継者と見做されるようになった男。

ニルリティ
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの若きリーダー。
強敵と戦う際には強化服「護国軍鬼4号鬼」を着装するが、生身でもかなりの腕前の持ち主。
なお「ヒーローとしての名前」である「ニルリティ」は、インド神話の悪鬼の一族「羅刹」の別名と云うヒーローらしからぬもの。

ソルジャー・ブルー
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
異常に高い身体能力を持ち、軍隊式らしき戦闘術を使う。
強敵と戦う際には強化服「護国軍鬼5号鬼」を着装する。
しゃべり方に若干の「外人訛り」が有り、女性としては高めの身長(170cm以上)。

ヴァルナ
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
通常の「魔法」「超能力」とは異なるらしい「水を操る力」の持ち主。
「単純に途方も無い力を持っているのみならず『出来る事の範囲』が異様に広い」規格外の能力の持ち主だが、裏を返せば「ほんの少しのミスで地形を変えかねない」ほどの存在である為、「強力過ぎて逆に使える状況が限られる」ヒーロー。

ファイアリー・エンジェル
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
通常の「魔法」「超能力」とは異なるらしい「炎や熱を操る力」の持ち主。
ただし、ヴァルナほどでは無いが「強力過ぎて逆に使える状況が限られる」らしく、前線に出る事は稀。
「機械仕掛けの天使/聖騎士」をイメージしたプロテクターを身に付けているが、そのプロテクターには、偶然にも、後述する「永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)」のプロテクターに刻まれている旧約聖書の一節の本来の文章「神の御怒りは束の間に過ぎず、神の恩寵は生涯に渡り続く。涙の夜は必ず明け、喜びの朝が来るだろう」が英語で刻まれている。

クリムゾン・サンシャイン
御当地ヒーローチームに所属しない一匹狼のヒーロー。
白いプロテクターと旭日旗をイメージした覆面を着装している。
超身体能力と高速治癒能力を誇るが、似た能力を持つ「ソルジャー・ブルー」に比べると、高速治癒能力では上回るが、身体能力や技量では劣る。
「御当地ヒーローの暴虐から一郎達を護ってくれていた」(※:あくまで一郎視点)が、ある日、突然、行方不明になる。

永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)
クリムゾン・サンシャインの行方を探す一郎の前に立ちはだかる謎の悪漢(ヴィラン)。
黒いプロテクターと黒い覆面を着装し、そのプロテクターには、旧約聖書の詩篇の一節を逆転させた「神の慈悲など有っても束の間に過ぎず、人間の怒りは永遠に消えない。涙の夜は終る事なく、喜びの朝など来る筈は無い」と云う言葉がドイツ語で刻まれている。
「真紅の夕日が沈んだ後に来る、明ける事なき夜」を自称し、一郎の友人達を次々と手にかけ、一郎を孤立させてゆく。

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