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文字数 822文字
時代劇だったら「敵ながら見事」なんて台詞が出て来る所だろう。
しかし、残念ながら、ここは現実だ。
俺達が金属バットに蹴りにパンチで優しく説得しても……この「正義の味方」を名乗るテロリストの一員は仲間の情報を吐かなかった。
マズい……非常にマズい……。
「なあ、お願いだから、仲間の『正義の味方』の身元を洗い浚い吐いてくれよ。頼む、こっちにも都合が有るんだ。お願いします」
撮影用のデジカメのSDメモリが、そろそろ満杯になる。
クソ、4K画質で撮影するんじゃなかった。
「し……知らない……ぼ……僕は……き……君達が言ってる『正義の味方』なんかじゃ……」
畜生。これだから、関東難民は人権を認めるべきじゃないヒトモドキなんだ。
俺達が、こんなに困ってるのに、自分の都合しか考えやがらない。
「じゃあ、何で、クリムゾン・サンシャインのコスチュームを持ってたんだよ?」
「……え……えっと……」
「ふざけんじゃねェ〜ッ‼ お前が偽クリムゾン・サンシャインになって悪事を働いて、本物のクリムゾン・サンシャインの評判を落すつもりだったんだろ〜がぁッ‼ さっさと吐けえ〜っ‼ 親父の命が惜しくないのかッ‼」
こいつの部屋の押入に入ってたクリムゾン・サンシャインのコスチュームは、コスプレ用の衣装なんかじゃない……。
どうやら、バイクのライダースーツを改造した……ちゃんとした防具付のモノだ。
「あ……あの……緒方さん……」
山下が、恐る恐ると云った感じの声を出す。
「何だ? こっちは急がしいんだぞ」
「ひょっとして、こいつが本物のクリム……」
「はぁッ⁉」
だが、次の瞬間、堤が慌てて山下の口を塞ぐ。
「おい、お前、寝不足でボ〜ッとしてんだろ? そうだろ? なぁ?」
「あ……ああ……多分……」
何だ、この2人?
「緒方さん、この親子、いくら痛め付けても……吐きそうにないっすよ。夜が明けない内にずらかりましょうよ」
「そうだな……」