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文字数 1,331文字

「なるほどね……親が……『旧藤沢市民会・久留米支部』の元役員か。……藤沢って、優ちゃんの実家だったけ……?」
「は……はい……」
 一応の「行方不明」……と言っても、親父(オヤジ)は県警には届け出をしてないようだが……になってから2〜3日で、クソ義弟の目は虚ろになっていた。
「で……こいつ、何者?」
「……学生の頃に……入ってた……サッカーサークルの監督の息子です……。試合の日に……時々、会った事が……」
「ふ〜ん……」
 俺が、ちょっと舌打ちをしただけで……クソ妹とクソ義弟は、何故か、ビクっと体を微かに動かす。
 何だよ……こんな優しいお兄様は、そうそう、居ないのに、その態度はねぇだろ。
「親は……無職……なんだこりゃ?」
 どうやら、俺達を何度も救ってくれた、数少ない「真のヒーロー」である「クリムゾン・サンシャイン」を「売り」やがったクソ野郎は……大学生……。
 えっ? Q大の理系の大学院? とんでもないエリート様じゃねぇか……。
 で、住所は……おい、あの団地だ……。この前の事件が起きた「関東難民」だらけの団地……。
 父親と2人暮しで……母親と姉が居たが、一〇年前の富士山の噴火で行方不明。
 おい、父親は……五〇そこそこなのに、無職?……なんだ、こりゃ?
 父親に関する添付資料は……健康保険の明細?……おいおい、なんだよ……この金額? それに……何の治療か判んないけど……入退院を繰り返してる?
 何か、ロクデモない病気のせいで無職になってる訳か……。
「ねぇ、優ちゃん、そのサッカーの監督って、何か、病気してた?」
「……い……いえ……心当りが……むしろ……」
「むしろ……何?」
「と……当時は……四〇過ぎなのに……とても、そうは思えないような……」
「えっ?」
「下手したら……僕たちより……身体能力は上だったかも……」
 どう云う……まさか……。
「その監督って、サッカー選手とかだったの?」
「一時期、J2のチームに居たらしいんですが……理由が有って辞めたみたいです……。詳しい理由は……」
「誰にも言ってない、そうだろ?」
「……は……はい……」
 その親父の名前でネット検索すると……Wikipediaに項目が有った……。
 たしかに、関東のJ2のチームに所属してたが……。
「おい……この成績って……どう思う?」
 高校の頃にサッカーをやってた山下に声をかける。
 しばらく、その成績を見ていた山下は……。
「い……いくら、J2って言っても……その……この成績は……その……」
「無茶苦茶?」
「普通に化物っす……。あと、これ変っすよ」
「何が……?」
「ここの怪我の記録ですよ。この怪我で、この期間に復帰って……絶対に無いとは言い切れないっすけど……その……」
 マズい……。まさか……。
 サッカー選手を辞めたのも……自分が「異能力者」じゃないか、って疑いを捨てきれなかったせいだろう……。
 俺が子供の頃、「異能力者」の存在が明らかになってからは……よく有る事だ……。「異能力者」である嫌疑をかけられたか……自分で自分が「異能力者」ではないかって疑いを捨てきれないスポーツ選手が引退する事は……。
 じゃあ……この親父が、本当に「異能力者」で……それが、子供……つまり俺達の標的にも遺伝していたなら……?
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登場人物紹介

緒方一郎
行方不明になった「ヒーロー」であるクリムゾン・サンシャインのコスチュームを偶然手に入れた平凡な若者。
かつて自分を何度も助けてくれたクリムゾン・サンシャインの代りに戦いに身を投じ、クリムゾン・サンシャインの行方を追うが……。
※あくまで本人主観であり、作品中の「真実」とは異なる可能性が有ります。

緒方正一
福岡県久留米市(あくまで現実ではなく作品の舞台になってる平行世界の)の市長。
かつては、富士山の噴火によって大量発生した「関東難民」を排斥していたが、久留米市を「福岡県3番目の政令指定都市」にする為、現在では「関東難民」積極受け入れ派になっている。
ある意味で「息子をネトウヨに育てた癖に、自分だけネトウヨを『卒業』した」と云うイロイロアレアレな人物。
※くどいようですが、作品の舞台になってる「平行世界の地球の福岡県久留米市」と云う設定の架空の場所の話における架空の人物であり、本作品の執筆開始以降(2021年4月以降)、この人を連想させるような福岡県久留米市もしくは他の地方自治体の市長・首長が誕生したとしても、偶然の一致に過ぎません。

関根優斗
「関東難民」だが、かつて「関東難民」排斥派だった緒方正一の娘婿になり、正一の実の息子を差し置いて、後継者と見做されるようになった男。

ニルリティ
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの若きリーダー。
強敵と戦う際には強化服「護国軍鬼4号鬼」を着装するが、生身でもかなりの腕前の持ち主。
なお「ヒーローとしての名前」である「ニルリティ」は、インド神話の悪鬼の一族「羅刹」の別名と云うヒーローらしからぬもの。

ソルジャー・ブルー
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
異常に高い身体能力を持ち、軍隊式らしき戦闘術を使う。
強敵と戦う際には強化服「護国軍鬼5号鬼」を着装する。
しゃべり方に若干の「外人訛り」が有り、女性としては高めの身長(170cm以上)。

ヴァルナ
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
通常の「魔法」「超能力」とは異なるらしい「水を操る力」の持ち主。
「単純に途方も無い力を持っているのみならず『出来る事の範囲』が異様に広い」規格外の能力の持ち主だが、裏を返せば「ほんの少しのミスで地形を変えかねない」ほどの存在である為、「強力過ぎて逆に使える状況が限られる」ヒーロー。

ファイアリー・エンジェル
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
通常の「魔法」「超能力」とは異なるらしい「炎や熱を操る力」の持ち主。
ただし、ヴァルナほどでは無いが「強力過ぎて逆に使える状況が限られる」らしく、前線に出る事は稀。
「機械仕掛けの天使/聖騎士」をイメージしたプロテクターを身に付けているが、そのプロテクターには、偶然にも、後述する「永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)」のプロテクターに刻まれている旧約聖書の一節の本来の文章「神の御怒りは束の間に過ぎず、神の恩寵は生涯に渡り続く。涙の夜は必ず明け、喜びの朝が来るだろう」が英語で刻まれている。

クリムゾン・サンシャイン
御当地ヒーローチームに所属しない一匹狼のヒーロー。
白いプロテクターと旭日旗をイメージした覆面を着装している。
超身体能力と高速治癒能力を誇るが、似た能力を持つ「ソルジャー・ブルー」に比べると、高速治癒能力では上回るが、身体能力や技量では劣る。
「御当地ヒーローの暴虐から一郎達を護ってくれていた」(※:あくまで一郎視点)が、ある日、突然、行方不明になる。

永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)
クリムゾン・サンシャインの行方を探す一郎の前に立ちはだかる謎の悪漢(ヴィラン)。
黒いプロテクターと黒い覆面を着装し、そのプロテクターには、旧約聖書の詩篇の一節を逆転させた「神の慈悲など有っても束の間に過ぎず、人間の怒りは永遠に消えない。涙の夜は終る事なく、喜びの朝など来る筈は無い」と云う言葉がドイツ語で刻まれている。
「真紅の夕日が沈んだ後に来る、明ける事なき夜」を自称し、一郎の友人達を次々と手にかけ、一郎を孤立させてゆく。

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