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文字数 1,162文字

 気付いた時には、俺は警官隊に囲まれ、銃を向けられていた。
「出来れば……武器を全て捨てて、手は頭の後ろにして、ひざまずいてもらいたいが……具合が悪いんなら、倒れたままでいい。では、一応、宣告するぞ。君には黙秘権が有る。君の今後の供述は法廷で不利な証拠となる可能性が有るので、以降の発言には気を付けるように。君には弁護士を雇う権利と取調べの際に弁護士の同席を求める権利が有り、もし、君が金銭的な理由で弁護士を雇えないのなら、公費で弁護士を雇う事が出来る。あと、別件逮捕は違法となったので宣告しておく。君は暴力犯罪未遂の現行犯以外の容疑でも取調べを受ける可能性が有る。いいね?」
「へっ?」
「本部、命令にあった『コスプレをして違法な暴力行為を目論んでいる者』ですが、今、カメラに映っている人物で間違い無いか確認願います」
「お……おい、『コスプレをして違法な暴力行為を目論んでいる者』だと? それなら、そこの団地に居るだろっ?」
「確認したが居なかった」
「居るだろ」
「何が言いたい?」
「『正義の味方』を名乗る暴徒どもが……」
「悪いが、我々が上から受けた命令は、『コスプレをして違法な暴力行為を目論んでいる者』を逮捕または射殺せよ、だったんでな……」
「いや、奴らは……」
「ああ、あそこに居る『正義の味方』はコスプレしてない」
「してるだろ……」
「してないぞ」
「してる」
「してない」
「何がどうなってる?」
「ああ、あそこに居る『正義の味方』達がやってるのはコスプレじゃない。確認した限りでは、ちゃんと強化服(パワードスーツ)として機能するモノを着装してるのが1人と、本物の変身能力者が2人だ」
 ……。
 …………。
 ……………………。
 おい、お役所仕事にも程が有るだろっ‼
「でも、俺は、コスプレはしてるが……違法な暴力行為を目論でなど……」
「腰に拳銃と散弾銃が有るように見えるのは、小職の目の錯覚か? おい、みんな、ちゃんと確認してくれ、こいつは明らかに武装してるよな」
「ああ……モデルガンにしては出来が良過ぎるな。本物にしか見えない」
 お……おそろしい……。警官ともあろう者達が……同調圧力にあっさり屈服した。
 ま……まさか……そんな……「正義の暴徒」どもの魔の手は、警察内部にまで……。
 くそ……なんて事……あ……っ‼
 ドオンッ‼
 「正義の味方」を名乗るテロリストどもに精神操作をされていた哀れな警官達は……すっかり油断していた。
 俺は腰の散弾銃を取り出し、哀れな警官に向けて発砲。
「お……おいっ⁉」
 すまない、これしか方法が無いんだ。
 「正義の味方」を名乗るテロリストどもにやられた精神操作を解く方法は……殺害しか無い。
 君達、善良な警官に罪は無い。そう……悪いのは……。
 俺は車に向かって逃げながら、「正義の味方」を名乗るテロリストへの怒りを新たにした。
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登場人物紹介

緒方一郎
行方不明になった「ヒーロー」であるクリムゾン・サンシャインのコスチュームを偶然手に入れた平凡な若者。
かつて自分を何度も助けてくれたクリムゾン・サンシャインの代りに戦いに身を投じ、クリムゾン・サンシャインの行方を追うが……。
※あくまで本人主観であり、作品中の「真実」とは異なる可能性が有ります。

緒方正一
福岡県久留米市(あくまで現実ではなく作品の舞台になってる平行世界の)の市長。
かつては、富士山の噴火によって大量発生した「関東難民」を排斥していたが、久留米市を「福岡県3番目の政令指定都市」にする為、現在では「関東難民」積極受け入れ派になっている。
ある意味で「息子をネトウヨに育てた癖に、自分だけネトウヨを『卒業』した」と云うイロイロアレアレな人物。
※くどいようですが、作品の舞台になってる「平行世界の地球の福岡県久留米市」と云う設定の架空の場所の話における架空の人物であり、本作品の執筆開始以降(2021年4月以降)、この人を連想させるような福岡県久留米市もしくは他の地方自治体の市長・首長が誕生したとしても、偶然の一致に過ぎません。

関根優斗
「関東難民」だが、かつて「関東難民」排斥派だった緒方正一の娘婿になり、正一の実の息子を差し置いて、後継者と見做されるようになった男。

ニルリティ
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの若きリーダー。
強敵と戦う際には強化服「護国軍鬼4号鬼」を着装するが、生身でもかなりの腕前の持ち主。
なお「ヒーローとしての名前」である「ニルリティ」は、インド神話の悪鬼の一族「羅刹」の別名と云うヒーローらしからぬもの。

ソルジャー・ブルー
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
異常に高い身体能力を持ち、軍隊式らしき戦闘術を使う。
強敵と戦う際には強化服「護国軍鬼5号鬼」を着装する。
しゃべり方に若干の「外人訛り」が有り、女性としては高めの身長(170cm以上)。

ヴァルナ
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
通常の「魔法」「超能力」とは異なるらしい「水を操る力」の持ち主。
「単純に途方も無い力を持っているのみならず『出来る事の範囲』が異様に広い」規格外の能力の持ち主だが、裏を返せば「ほんの少しのミスで地形を変えかねない」ほどの存在である為、「強力過ぎて逆に使える状況が限られる」ヒーロー。

ファイアリー・エンジェル
福岡県久留米市・小郡市、佐賀県鳥栖市・三養基郡を中心に活動する「御当地ヒーロー」チームの一員。
通常の「魔法」「超能力」とは異なるらしい「炎や熱を操る力」の持ち主。
ただし、ヴァルナほどでは無いが「強力過ぎて逆に使える状況が限られる」らしく、前線に出る事は稀。
「機械仕掛けの天使/聖騎士」をイメージしたプロテクターを身に付けているが、そのプロテクターには、偶然にも、後述する「永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)」のプロテクターに刻まれている旧約聖書の一節の本来の文章「神の御怒りは束の間に過ぎず、神の恩寵は生涯に渡り続く。涙の夜は必ず明け、喜びの朝が来るだろう」が英語で刻まれている。

クリムゾン・サンシャイン
御当地ヒーローチームに所属しない一匹狼のヒーロー。
白いプロテクターと旭日旗をイメージした覆面を着装している。
超身体能力と高速治癒能力を誇るが、似た能力を持つ「ソルジャー・ブルー」に比べると、高速治癒能力では上回るが、身体能力や技量では劣る。
「御当地ヒーローの暴虐から一郎達を護ってくれていた」(※:あくまで一郎視点)が、ある日、突然、行方不明になる。

永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)
クリムゾン・サンシャインの行方を探す一郎の前に立ちはだかる謎の悪漢(ヴィラン)。
黒いプロテクターと黒い覆面を着装し、そのプロテクターには、旧約聖書の詩篇の一節を逆転させた「神の慈悲など有っても束の間に過ぎず、人間の怒りは永遠に消えない。涙の夜は終る事なく、喜びの朝など来る筈は無い」と云う言葉がドイツ語で刻まれている。
「真紅の夕日が沈んだ後に来る、明ける事なき夜」を自称し、一郎の友人達を次々と手にかけ、一郎を孤立させてゆく。

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