第73話 破けた毛布
文字数 1,729文字
日々は少しずつ過ぎていく。
結婚指輪が届き、家の手続きの準備もした。
はなびの持ち出した毛布を家に置いておこうと提案すると、断固拒否された。
引っ越しの話し合いを、少しずつ進めていく。
やはり三体のぬいぐるみのみを持ち出すのは無理がありそうだった。
気持ちだけは理解出来たが、愛着の品の執着はそう簡単に手放せるものではない事をひしひしと理解する。
晶の執着の置き方は、とても人間らしいと思う。
しかしどこか不器用で、強靭に見えて不思議と危なっかしくて。
そんな彼を、はなびは優しい瞳で見つめた。
はなびは小さく頷くと、ソファーベッドにそっと座り込んだ。
DV夫の見分け方についてネットで情報収集をしたことがあるが、見極めが非常に難しい。
何がどうなるかは予測が不可能だ。
晶は少し破けた毛布を手に持ったまま、ソファーベッドに座るはなびの隣に腰を下ろした。