第33話 出発
文字数 1,538文字
すぐにこの部屋を退去するつもりだが、優先順位というものがあるだろう。
今日はどこで寝ることになるだろうか?
下着を数組、寝巻きを一組。
着替えを二着。
新しい歯ブラシなどを次々と入れていく。
やがて、玄関に向かった。
急激な生活の変化に心が追いつかぬまま、二人は外に出ると玄関の鍵を施錠した。
駅まで手を繋いで歩き、二人は電車に飛び乗った。
上り三駅なので目的地まで時間は掛からなかった。
あらゆる事をした。
本当に、あらゆる事を。
あらゆる初めてを、晶に持っていかれた。
あまりに情報過多で、付いていくのが大変なくらいだ。
晶に手を引かれて、はなびは電車からそっとホームへと移った。
少し歩いていくと、サミットの看板が見えた。
はなびが興味深そうに見ているのを察した晶は、手を引いて店の中に入っていった。
籠もる気だ、と心の中で呟く。
快諾はした。
確かに、自分は全てを許した。
しかし、その一方で考え込む。
私の何処が良いのだろう、と。
何故晶は、自分にここ迄固執するのだろう。
仕事の利の話は聞いたが、あまりにも勢いがありすぎる。
何かあるのだろうか。
彼の中の琴線に触れるものを、自分は持っているのだろうか?
少し考えてから、カゴの中に自分の好みの惣菜を一つ入れた。