第35話 小さな一触
文字数 1,616文字
次にはなびが目覚めた時、部屋は明るくなっていた。
窮屈な中、身体を動かす。
すぐ隣に晶が寝ている様子が目に飛び込み、心臓が跳ねた。
急展開だった。
元のアパートの事を思い起こすが、恐らく晶は家に戻ることを反対するだろう。
そのくらい、隣で寝ている男は執着が強い。
それはここ数日で思い知らされた。
異常なまでの強引さを以て、自分を雁字搦めにしてくる。
はなびは少し考えてから、ベッドから抜け出すと下着を身に着けて服を羽織り、洗面所へ向かう。
歯ブラシを開けて、歯磨きを始める。
歯を磨きながら洗面所を一通り見渡した後で、口腔ケアを終えてリビングに戻った。
驚く程に会話が進む。
二人は冷蔵庫にあるお茶のペットボトルを飲むと、外出の支度を始めた。
二人は出掛ける支度を済ませ、家を出た。
はなびは晶の様子をチラと見るが、彼は平然としている。
こんな会話をしたら、通常なら軋轢が生じて関係性が破綻するだろう。
しかし、晶は気にしない様子ではなびの手を取った。
やはり、この人は只者ではない。
密かにそう思いながら、はなびは手を握り返した。