第46話 チャレンジ一年生
文字数 1,472文字
帰宅後、はなびは冷蔵庫の中を確認し、考え込んだ。
自分の感覚で買い物をしてしまった事に気付き、腕を組む。
どうしよう。
安かったからという理由で生ラーメンとはんぺんを買ったけど、果たしてこれでいいのだろうか?
リビングで晶が新品の炊飯器の箱を開けているのを横目に、浸水済の米を鍋で炊く支度をした。
鍋で炊いた方が時間が掛からない為である。
冷蔵庫にある魚を二尾取り出し、グリルを開いた。
中は全く使用されておらず、新品同様であった。
はなびはグリルの使用を諦め、魚を酒で洗って煮付けにすることにした。
すまし汁の準備をする。
いえ。
時間がかかるので炊飯器の使用は明日からです。
説明書を後で見せてくださいね。
すみません。
グリルを使って良いか分からなかったので、煮ちゃいました。
いけね。
グリル不使用チャレンジ中だったな。
使ってもいいよ。
私もそのチャレンジに参加すべきだと思います。
しかしフライパンで魚を焼くのは……。
一体どうしたんだ?
質素な暮らしが始まると思ったのに。
質素な!?
いえ、何を仰いますか。
晶さんに生活を合わせますよ!
あれは私の、極貧生活チャレンジでした!
そうです。
私、もっとお料理を覚えます。
料理本を見に行こうと思っていて。
ククパは駄目です。
料理の腕がちっとも上がらない。
見るなら味の素です。
ククパと略すくらいだから、実は極めているんだね?
それにしてもどうして……。
花嫁修業だと思ってください。
そういう気持ちになったんです。
分かってください。
私は、じゃがいもの面取りをするような家庭に生まれていないんです。
一から努力が必要なんです。
うちだって面取りなんてしないよ。
可食部が減るだろう。
いえ、でもね。
これは気持ちの問題なんです。
とにかく、お料理を頑張ります。
分かったよ……。
それより、炊飯器の置き場所を決めよう。
炊飯器の位置の指定を晶に任せ、はなびは料理の続きに取り掛かった。
出来上がった料理は、ご飯、三つ葉のすまし汁、鯖の味噌煮、はんぺん焼きであった。
うっかり半額だったので買ってしまったんです。
賞味期限の関係で、早く食べないといけなくて。
私、買ってから気づいたんですよ。
いつもこうなんです。
そういうものかな。
そのうち、きみはじゅんさいとか買い出すんじゃないか?
それは、どうに扱っていいのか知らないです。
瓶の中に浮いているやつ?
あれは、煮物に使うんだよ。
酸味があるんだ。
懐石料理になるよね。
あ……。
ほら。
晶さんは博識過ぎます。
私、本当に頑張らないと。
そうかな。
いや、父が問屋と懇意で、賞味期限切れの高級食材がよく家に持ち込まれたんだよ。
それを母が調べて調理していたんだ。
そんな嘘みたいな話があるんですか?
いえ。
私は努力したいんです。
頑張らせてください!
食事を終え、食器を片付けようとすると颯爽と晶が先に食器をまとめて片付け始めた。
はなびは慌てて追いかける。
隙を見つけて仕事を探したが、晶には一切の隙がなかった。
はなびは諦めてリビングに戻り、炊飯器の取扱説明書に目を通し始めた。
ふと窓辺に目をやると、ガブリアスのぬいぐるみの隣に色違いのポポッコのぬいぐるみが飾ってあった。
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