第15話 高鳴る気持ち
文字数 1,720文字
改善案が実装された様子もなく。
毎日が刻々と過ぎていく。
あんなに気にしていたのに、会社内で起こった衝撃的な事件に気を取られ、それどころではなくなってしまったのだ。
忙しい日々。
積み上がるストレス。
はなびは気晴らしを考えた。
最寄り駅の3つ前で下車をする。
空腹を抱えながら、目的地へ足を進めた、その時。
はなびはそっとコンビニに近づく。
店内はコーヒーの匂いが充満し、空腹感をくすぐる。
晶に似た背格好の男性を探し、そっと近づいた。
振り向いた彼は、やはり見た顔だった。
はなびはフラフラと彼に近づいていく。
先日までの認識なら断っていただろう。
しかし、今は違う。
彼に心を許しかけている為、一緒に過ごしたい気持ちが強かった。
はなびは一呼吸置いてから頷いた。
明日が休みで良かった、とこっそり考える。
すき家で弁当を買って歩いて家に帰る予定だったが、晶に会ったことで予定が狂った。
しかし、嬉しい誤算。
自分でも信じられない気持ちのまま、彼の隣を歩いた。
徒歩3分の場所に、目的地はあった。
すんなり通され、すぐにお通しが出てきた。
店内は空いていた。
晶はサラダと焼き鳥をオーダーしている。
運ばれてきたお冷を含みながら、はなびは晶の姿をこっそり盗み見ていた。
こんなに優しい言葉を貰って良いのだろうかと考える。
料理に気を取られたはなびは箸を手に取って食べようとしたが、晶がサラダを取り分けている様子に気づき、ふと手を止めた。