第62話 新婚生活
文字数 1,912文字
はなびはノートパソコンに向かい、作業を続けていた。
6月28日付けを以て、完全リモートに移行している。
既に会社のデスクにはなびの私物は置いていなかった。
テーブルに向かい、静かにキーボードを叩き続ける。
やがて、晶が起き出す。
相変わらず、怒涛の勢いでLINEメッセージが届く。
心春のメッセージは、いくばくかの怒りを孕んでいた。
はなびは冷たい目でスマホを見つめ、やがて適当な返事を打った後に電源を切った。
既に彼女への信頼は地に落ちており、これほど業務ミスが多いのは彼女がわざと間違いを犯しているのではないかと邪推するほどになっていた。
怒りの念を悟られないように細心の注意を払って返信を続けるが、彼女との心の距離は永劫縮まる事はないという確証があった。
晶は立ち上がると、キッチンに向かって何か準備を始めた。
有給を5日程取ったという。
7月4日まで、新婚生活を満喫すると話していた。
暫くすると、晶がコーヒーを持ってリビングに姿を現した。
旅行は、行けばそれなりに楽しめるだろう。
そう思う事は度々あったが、詳細を詰めていくと不都合が多い。
特に新婚には。
はなびはぼんやりとイメージトレーニングをしながら、コーヒーカップを手に取った。
そのままはなびは、ベッドに押し倒された。