第18話 帳が引き上げられる頃
文字数 1,682文字
狭い洗面所に隅に置かれた洗濯機の上に、厚めのバスタオルが置いてある。
ブルーグレーのタオルをそっと手に取ると、全身の水滴を拭き取った。
ふと、脇に目をやり、慌てて浴室に戻るとカミソリを探した。
ムダ毛処理を行ったはなびは身体をシャワーで流すと、再び浴室を出た。
先ほど着ていた下着を再度身につけ、置いてあったTシャツを身につける。
Tシャツには
「なすびのもり」
という筆文字が書いてあった。
洗濯機の上にタオルを置き、洗面台を覗き込む。
歯を磨きたい気分だが、歯ブラシを借りるのは忍びなかった。
棚にあったマウスウォッシュを一口だけ頂戴し、ついでにフロスも借りる。
せめて歯間掃除くらいはしておくべきだろう。
脱いだ服を軽く畳んでから、そっと洗面所を後にする。
リビングを覗くと、晶はスマホをいじっていた。
ティッシュを見つけると、使用済みのフロスを包んだ。
ソファーにあるカバンを開き、畳んだティッシュを仕舞うと中を確認する。
中を荒らした形跡はなかった。
はなびはスマホを取り出すと、電源スイッチを入れた。
にわかに恐怖心が襲い、手が震えた。
もうそんな歳じゃないんだ、と自分に言い聞かせる。
ブックマークに登録したホームページ巡りをしようとするが、全く集中できない。
はなびはスマホをいじることを諦め、カバンにしまい込んだ。
部屋の中を静かに見渡す。
それは、人気アニメに登場するモンスターキャラクターを模したものだった。
見覚えがあるデザインだ。
ガブリアス
と書いてあった。
意外なキャラクター名を目にし、はなびは小さく笑う。
壁紙、天井クロスなどを見ていると、晶がリビングに戻ってきた。
焦る心と緊張で、下半身がきゅうっと締まる感じがした。
はなびは目を閉じ、俯いた。
頬を手で包まれた瞬間、はなびの中で何かが弾け飛んだ。
何度も唇を交わす内に、顔の角度や唇の開き方などを試行錯誤していく。
こんなに自分が積極的だと思わなかった。
晶は何を考えているのか、もっと知りたい。
なんだか酔っているようだ、と考えていると、ベッドの上に行くように促される。
はなびは言われるがままに、晶に付き従った。