第29話 買い物

文字数 1,407文字

残業を終えたはなびは、大急ぎで駅に向かった。

滅多に行かない新宿行きの路線に飛び乗る。


混雑する電車の中で、スマホを取り出して検索をかけた。

どこがいいかなあ。

はあ。

贈り物って難しい。

やがて新宿に到着した。

大急ぎであちこちを見て回ったが、しっくり来るものが見つからなかった。

目的のものが得られず、諦めて今度は反対側の池袋に向かう。


池袋には、目的のものが幾つも並んでいた。

うーん。

5000円でも足りないくらいだ。


でも、この量じゃないと納得されない気がするなあ。

既に終電近くになり、はなびは疲弊しながら下りの電車に揺られる。


可愛らしくラッピングされたプレゼントを入れた紙袋を更に大きめの紙袋に入れて携え、開いた座席に座ってひと息ついた。



帰宅後、晶と幾つかのLINEのやり取りを交わし、やがて眠りについた。




翌日。

目が覚めると晶からのメッセージが大量に溜まっていた。

うわあ。

寝落ちちゃったみたい。

晶さんからこんなにLINEが!

おはようございます。

ごめんなさい。

寝落ちしちゃいました。

今日、東京に帰るんですね。


おはよう。

俺ばっかりメッセージ送ってごめん。

早く逢いたいね。

そうですね。

会うのを楽しみにしています。

今日は早めに出社します。

晶さんも頑張ってね。

無事の帰宅をお祈りしています。

LINEの返事もそこそこに、はなびは出勤準備を進めると昨日購入したプレゼントを手に取り急いで家を飛び出した。




会社に着くと、警備員以外は誰もいなかった。

はなびは警備員に軽く挨拶をすると、誰もいないオフィスに向かった。


軽く室内を掃除し、ディスクにつく。

自主的な早出である。

今日は本当に早く帰るんだ!

頑張ろう!

日常のルーティーン以外の現在出来ることを洗い出し、早急に仕事を進めていく。


やがて、ゆきこが出社してきた。

おはようございます。

あの、これどうぞ。

昨日のお礼です。

ゆきこがディスクにポーチを置く頃合いを見計らって、はなびは昨日購入した贈り物を差し出した。

にわかに皺の出来た紙袋から、皺一つない可愛らしいデザインの紙袋を取り出す。

中には、包装されたプレゼントが入っていた。


ゆきこは手渡された贈り物を見て、目を輝かせた。

ああ!

これ、ブクロのあの店の!

ずっと気になっていた韓国コスメじゃない!

あっ!

シートも入っているわ。

あんた、どうしてあたしの趣味を知っているわけ?

いえ。

知っている訳じゃなくて……。

お好きかなと思って。

ほんの気持ちです。

お気に召したなら嬉しいです。

いや、アガるわー。

早速今夜から使わせて貰うわね!

サンキュー!

はなびはホッと胸を撫で下ろすと、業務に集中した。


ゆきこは始終機嫌が良さそうに過ごしており、話しかけてくることも少なかった。




過集中モードで仕事を片付け、定時になるころに仕事を切り上げることが出来た。

帰りの支度をしていると、ゆきこが笑顔を向けてきた。

ドモホルンリンクルもいいけどね。

韓国コスメ情報がスマホを開く度に目に付くんで、どうも目移りしちゃうのよね。

色々試したいのよ。

そうですね。

化粧水も、ずっと同じのを使っていると効果が薄くなる気がしますもんね。

たまに変えると効いた感が出てきますね。

よく知っているわね!

あんた、たまには良いこというのね!

今日はサンキュね。

ばっはは〜い。

ご機嫌なゆきこを見送り、はなびは机の上を片付けると事務課を出た。



夕食のことを考え、途中でスーパーに寄ることにして帰宅路線を脳内で組み直し、駅へと向かった。

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登場人物紹介

雪月はなび

冴えないOL

5月生まれの25歳

紫水晶

営業部のイケチャラ男。

2月生まれの25歳。

四線義勇太

はなびの勤める会社の事務の上司。

夏木ゆきこ

はなびの同僚。

7回の転職経験がある。

佐滝右近

はなびが勤める会社の社長の倅。

小満度心春

企画部からの異動者

錦戸達也

晶の友達。

ホストをしている。

紫水晶のLINEアカウント

雪月はなびのLINEアカウント。

小満度心春のLINEアカウント

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