第40話 恋のテンペスト
文字数 1,559文字
業務を始めて暫く経った頃、義勇太が小満度を連れて事務課のルームに入ってきた。
はなびはデスクから立ち上がると、軽く会釈をする。
ゆきこはつまらなそうに椅子に座ったまま、足を組んで回転椅子の角度を変えた。
心春を自分の右隣の席にするよう促し、軽作業の指示をした。
心春はある程度の心得があるようで、水を吸うスポンジのように業務を覚えていった。
業務はスムーズに終わった。
何とか19時までにけりをつける事が、出来たので、早々にはなびは退勤の支度を始める。
ふとスマホを確認すると、LINEメッセージが来ていた。
メッセージの主は心春だった。
彼はLINEでチマチマとやり取りをするのがもどかしいと話していたから、同棲と同時にやり取りも激減する事になるのだろう。
既読を付けてしまったので、はなびは大急ぎで返信を打った。
素早くメッセージを返すと、はなびは急ぎ足で会社を飛び出した。
一本でも早い電車に乗ろう。
その一心で駅へと向かった。
電車に揺られ、はなびは急いで新しい家を目指した。
玄関を開けると、すぐに晶の出迎えがあった。
はなびは表情を緩め、カバンを置いた。
その足で、二人は家を出た。
すぐ近くのファミレスに入る。
さっとメニューを選び、おしぼりで手を拭きながらはなびは晶の手などを眺めた。
運ばれてきた料理を食べ始めるもと、少し口にしたところではなびは急に食欲を失った。
重く感じるカトラリーを、そっと置く。
そして、潤んだ瞳でじっと晶を見つめた。
早く帰って、食べようとか言い出すのではないだろうか。
はなびは少しはしたない想像をして、全く食指の動かない料理を恨めしそうに見つめた。