第31話 人生の墓場へ
文字数 1,483文字
気が付くと、既に日が変わっていた。
はなびは枕元のゴミ箱を覗き込みながら、ぼんやりと考え込む。
スルリとベッドから抜け出すと、通勤用カバンからサガミオリジナルの箱を取り出した。
ゆきこから受け取ったまま、カバンに入れっぱなしになっていたのだ。
部屋のシーリングライトを点灯し、晶に手渡した。
晶は箱から銀の包みを取り出し、少し凝視したのちに溜息を吐いた。
そっと袋を指差す。
後ろから抱きつかれ、はなびはそっと目を逸らした。
やはり彼は押しが強すぎる。
強引さが、少し怖い。
少し考えてから、小さく頷いた。
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いつの間にか寝てしまったらしい。
外が明るくなった事に気付いて、はなびは目を覚ました。
すぐ隣に晶の姿を確認し、心臓が跳ねる。
そういえば、とはなびは顔を赤くした。
他に経験がないので比較対象がないが、これは本当に現実なのかと考え込む。
昔に読んだ官能漫画のテンプレート展開のように事が進んでいるような感覚に見舞われた。
はなびはクローゼットから寝巻きを取り出すと、素早く身に付けてキッチンに向かう。
既に同棲生活が始まっている気がする。
しかし、これから買い物に出る必要もあるかもしれない。
そんな事を考えながら、システムキッチンの引き出しを開けた。
カトラリー類が、一人分しかない。
はなびは考え込みながら、食パンにハムとチーズを乗せてオーブントースターで焼き始めた。