第74話 妊娠
文字数 1,610文字
身体が重く、奮い立たせようとしても何故か元気が出なかった。
もしやと思い、スマホを手に取った。
カレンダーを確認してから、晶にLINEを送る。
興奮気味に、はなびは元へと駆け寄った。
仮に陽性でなかったとしても、二本セットのものなら再検査は可能である。
晶から検査薬を受け取ると、ヨロヨロとトイレに向かった。
逸る気持ちを抑えつつ、説明書通りに尿を採取し検査棒にかけて待機する。
すると、くっきりと陽性ラインが浮かび上がった。
はなびはそっと、検査薬を晶に手渡す。
暫くキスを交わし、そっと離れてから浴室へと向かう。
はなびはぼんやりとした頭でソファーベッドに座り込むと、何度も検査薬の陽性反応を確認する。
妊娠検査薬を使うと、受精卵の時点でうっすらと既に陽性が出る事を。
黄体ホルモンが子宮全体に馴染んでいないと、着床そのものが不可能である事なども。
し尿に反応が出るという事は、血中の黄体ホルモンが増加した為で、その頃は恒常性のバランスが酷く崩れる為に体調不良が出やすくなることも。
はなびの隣に座り込み、キツく抱き締める。
近所の産婦人科を一緒に受診し、心拍確認まで通い、母子手帳の受け取りまで二人で行った。
はなびは拒否したが、晶は耳を貸そうとしなかった。
有給が次々と消化されていく。
しかし、はなびは業務の手を止めることはなかった。
パソコンにデータを打ち込んでいく。