第38話 何者なんだ…

文字数 1,394文字

晶の家に帰宅後、持ち物をどこに置くかについて話し合った。


ソファーベッドを常にベッドにし、シーツを敷いてそのまま日常を過ごすという事で落ち着いた。

毛布はベッドの上に置くことになった。

流石にこのままだと景観が悪いかもしれない……。
クイーンベッドを後で買いに行こう。

ベッドは新品が良いな。

まあ、古いベッドをリサイクルしようとする人間の言う言葉ではないけど。

このペースでいると、あっという間に子どもが出来そうな……。
そうだね。

俺は早く育児をしたい。

それも目的なんだ。

はなびは信じられないような目で晶を見つめた。


育児がしたい?


一体、何を考えているのだろうか。

晶さんは殿様か何かですか?

お世継ぎを求められているのですね?

えっ?

それはどういう……。

この令和の時代、イクメンなる言葉が生まれて男も育児をすべし、という視点が持て囃されていますけど。

やはり、男性は基本的に育児には向いていないと思うんですよ。

特に子が小さいうちは。

晶さんは流行に乗るようなタイプには見えないし、発言も20代のそれとは思えないです。

そうかな?

子どもは可愛いよ。

そっと視線をそらしたはなびは、小さく溜息を吐いた。


晶は、どれだけ完璧であれば気が済むのだろう。


その言動が実際に行動に伴えば、だが、晶ならきっとやり遂げるに違いない。

彼はそんな気にさせる男だった。

もう時間が遅いので、寝る支度をします。

私はソファーベッドを使いますね。

ネットで米をポチりたいので、この部屋の住所を教えてください。

米を買う?

炊くのかい?

まさか、鍋で?

そうです。

外食だけだと費用が嵩んでいけないです。

二人暮らしなら、米を買って炊いた方が良いです。

スーパーで買ってもいいですけど、重くて。

待て!

炊飯器を買おう!

米も俺がポチるから!

はなびも強引だね。

どこからそんな行動力が。

覚悟を決めただけです。

一緒に住むとなれば、私は全力で生活を回しますよ。

家を買うつもりなら、少しでもお金を貯めないと。

戸建てでも何でも、常に引っ越しを視野に入れて部屋を整えていく方が効率的だと思います。

きみだって20代に見えないよ!

何者だよ。

どんだけ生活力があるんだ。

仕事の成果です。

事務職だと、とことん合理主義に走ります。

そうしないと会社に還元出来ません。

きみは本当に、何者なんだ。

俺の会社の事務の女の子は、誰一人としてそんな事を考えていそうにないよ。

ブランドのバッグを欲しがって、時に夜の仕事をしている子もいるくらいだ。

うちの会社の事務も変わりません。

頼りになるのは上司くらい。

しかし、社長は面接で私の能力を汲んでくだすったので、少しでも力になれるよう頑張るしかなくて。

本気で言っているのか?

俺は結婚を決めて心底良かったと思っているよ。

自分の目に狂いはなかったと。

私もです。

こんな縁があるなんて。

大見得を切って、今後の目標と意気込みを並び立てたが、とはなびは考える。


最初の勢いは重要だ。

しかし、気を抜いてダレるような事があってはいけないと、心に強く刻み込んだ。


しっかり休んで、しっかり働こう。

全身全霊をかけて。


そう考えながら、先に入浴をした。

寝る支度をしていると、同じく入浴を済ませたらしい晶が後ろから抱きついてきた。

え?

あの。

明日の為に休むのでは。

休む?

そうだね。

でも、このままだと休めないでしょ。

……。
どこまでかみついてくるのか、この毒蛇は。


そう思いながら、はなびはそっと目を閉じた。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

雪月はなび

冴えないOL

5月生まれの25歳

紫水晶

営業部のイケチャラ男。

2月生まれの25歳。

四線義勇太

はなびの勤める会社の事務の上司。

夏木ゆきこ

はなびの同僚。

7回の転職経験がある。

佐滝右近

はなびが勤める会社の社長の倅。

小満度心春

企画部からの異動者

錦戸達也

晶の友達。

ホストをしている。

紫水晶のLINEアカウント

雪月はなびのLINEアカウント。

小満度心春のLINEアカウント

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色