第72話 親友へのプレゼント
文字数 1,562文字
運ばれてきた料理をそれぞれ受け取り、三人は静かに食事を始めた。
達也はフォークで肉をつつきながら溜息を吐く。
小指を立てる仕草をする達也を見て、はなびはにわかに眉を顰めた。
ホストが枕営業をするのは危険極まりない事は、素人のはなびにも理解出来る。
少しばかり達也に負の念を向けつつ、カトラリーの細工に視線を落とした。
はなびは少し視界が明るくなったような気分になり、達也を見た後で晶の腕に視線を落とす。
服と人形と細々としたものだけ持ち出して、あの家を彼にそっくりそのまま譲るとは。
引っ越しの手間が大幅に省けるのではという皮算用からにわかに興奮し、晶の腕をそっと握った。
意気投合した上で会計を済ませると、そのまま上機嫌に解散となった。
二人は狐につつまれたような気になりながらも池袋のポケモンセンターに向かい、フライゴンの人形を購入した。
晶は首を傾げながら、大事そうに袋を携えて自宅の路線へと向かう。
はなびは手を繋がれながら、フライゴンのイメージの友人について考え込んでいた。
ふと、口を開く。
達也に晶は利用されていたのでは、とはなびは思う。
晶は自分には少し遠慮が見られないが、実は他の人間に良いように使われる事が多いのでは、と。
それは自分の経験則から、何となく推し量れるものだった。
付き合い始めの頃に感じた、渇いたような感情。
渇望とでも言うのだろうか。
その原因はどこから来ているのか、そして少しずつ蓄積されたものである可能性を、ぼんやりと考えていった。