第43話 やめられない?

文字数 1,383文字

気が付くと、朝が来ていた。

はなびはゆるゆると起き上がると、スマホの画面を確認する。


自分が寝落ちてから、6件もメッセージが溜まっている。

上手くキスマークが出来ないです。

いつも殴られたみたいに青痣だらけになります。

最後のメッセージが5時だ。

ずっと起きていたのかな?

というか、キスマーク?

付けないなあ。

おはようございます。

寝ていました。

キスマークは鬱血ですよね。

ゲンタシンで早く治りますよ。

心春に真面目にメッセージを送ってから、はなびは晶のLINE画面を開いた。
おはようございます。

ごめんなさい。

昨日は途中でメッセージを止めてしまって。

会社の人が怒涛の送信をしてくるので、疲れてしまって。

おはよう。

俺は寂しかった。

今日の飛行機で帰るよ。

結局、金曜日になってしまった。

早く会いたいです。

愛してます。

俺も愛しているよ。
すっかり愛の言葉を送り合う事に慣れてしまった。


一昨日辺りに、長々と画面をスクロールしても同じ言葉しか見当たらないという交わし合いをしたからであった。



心の何かを解禁したという実感があった。

はあ。

やっぱり、まだどきどきする。

ゆるゆると出勤準備を行い、家を飛び出した。


その日は全身全霊をかけて過集中モードで業務にあたった。

定時で上げようと必死になっていると、突然肩を叩かれた。


上司の義勇太だった。

雪月君、あとで来てくれ。
……?

はい。

定時まで仕事に取り掛かった後で、はなびは義勇太のデスクに向かった。


彼は少し憂鬱そうにパソコンの画面を眺めていた。

退職の件だが、認められないと出た。

通常、退職の三ヶ月前に報告が必要だが、それも駄目だという。

その代わり、リモートは許可するというんだ。

それでいいかい?

リモートワークですか?

そんな……。

そんなに私の腕を買ってくださるというのですか?

結婚後は、他に転職しないのだろう?

社長は君がいないと倒産するとまで言っているぞ。

わかって欲しい。

まさか……。

光栄ではありますが。

少し、返事を待って頂けますか?

ああ。

まだ入籍の予定はないのであろう?

いえ、それが。

来月の予定でして。

随分急だな。

ジューンブライトかい?

……はい。

そのように言われました。

今どき珍しいスピード婚だな。

分かった。

返事は待とう。

義勇太に軽く会釈をして、はなびは退社した。


急いで会社を出発し、駅へと向かう。

駅のホームでスマホを確認すると、LINEメッセージが来ていた。

晶からだった。

今、蒲田にいるよ。

はなびはどこ?

会社の近くです。

蒲田ですか?

25分くらいで着きます。

駄目ですよ。

ちゃんと家に帰ってきてください。

そうかな?

ラブホデビューしようかなと思って。

うーん。

ちょっと調べませんか?

ラブホ巡りはいいんですけど。

なるほど。

確かに空いている時間の方がいいね。

そういえば、生理中だった、とはなびはぼんやりと考えた。


生理中の性行為はどうなのだろうか?と考えながら、はなびは静かに電車に乗った。



やがて、晶が帰宅した。

おかえりなさい。

ご飯、一応作っておきましたけど、食べますか?

ただいま。

なんだ。

用意してくれていたのか。

昨日の内に下ごしらえをして、あとは温めるだけです。

お米は5kgを買ってしまいました。

ごめん。

後で食費を渡すから。

いいですよ。

私も仕事してますし。

そういう問題じゃないよ。

あのね、俺はきみの夫になるんだよ!

はなびは少し笑って、晶を迎え入れると二人で洗面所に向かった。
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登場人物紹介

雪月はなび

冴えないOL

5月生まれの25歳

紫水晶

営業部のイケチャラ男。

2月生まれの25歳。

四線義勇太

はなびの勤める会社の事務の上司。

夏木ゆきこ

はなびの同僚。

7回の転職経験がある。

佐滝右近

はなびが勤める会社の社長の倅。

小満度心春

企画部からの異動者

錦戸達也

晶の友達。

ホストをしている。

紫水晶のLINEアカウント

雪月はなびのLINEアカウント。

小満度心春のLINEアカウント

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