第25話 心揺れる
文字数 1,557文字
箸を手に持った途端、声をかけられる。
嘘を言っているつもりはないが、会話の流れそのものには虚偽が入っている。
少しばかり良心が痛むが、嘘も方便であると自分に言い聞かせた。
このままでは堂々巡りであるとも、経験則で知っていた。
はなびは胸を撫で下ろすと、義勇太の説得が上手くいくことを願いながら割り箸を割った。
昼食を終えると、はなびはすぐに業務に取り掛かった。
今日の分の遅れをなんとしてでも取り戻さねばならない。
同時に企画部からの連絡を待ったが、就業時間になるまで何の音沙汰も無かった。
はなびは終電近くまで仕事を続け、会社を出た。
晶からだった。
スワイプし、画面を開く。
一人は寿退社をし、もう一人は横領が原因でクビになった。
その後、右近以外は人の出入りがない。
しかし、こんなことを外部の人間に話すわけにはいかないだろう。
はなびはうんざりした表情で、返信を打ち始めた。
夕食は、冷蔵庫の中にあるもので適当に済ませよう、と考えながら帰途についた。
帰宅後、シャワーを浴びて夕食を用意しながらスマホを確認する。
先日の記憶が蘇る。
未だ洗濯をしていないシーツを指で撫ぜると、そっと目を閉じた。