第3話 出会いなんて…期待しちゃだめ!
文字数 1,595文字
予約の有無、人数の確認などを怠ったことに気づく。
意を決して店内に入ると、店員がすぐに現れた。
はなびは店員と入店名簿表を見比べる。
「滝田様、6名の予約がありますが……」
「それでは、こちらへどうぞ」
店員の後に続き、奥まった席に向かう。
通されたテーブルの上には予約席という札と、6膳の箸が並んでいる。
はなびはそっと礼を告げると、隅の席に腰を下ろした。
お手拭きで手を拭きながら、はなびは内装をそっと観察した。
ライトは明るいものの店内はややほの暗く、手描きの掲示物には小さなイラストが添えてある。
雰囲気の良い、中々良い店だ。
暫く業務のことについて考えていると、かすかに足音がした。
ふと顔を上げると、側に男性が立っている。
はなびはテーブルの隅にあるメニューを取り、そっと晶に渡した。
軽快な手付きで晶はメニューをめくっていく。
特別メニューの芋煮について少し話したが、頼まないということで意気投合する。
テーブルに映った彼と自分の影が輪郭が2つに見え、上から照らされたライトの数と影を見比べたりなどした。
白熱球を素手で触ると火傷をするなどと考えながら、お冷を口に含む晶を見つめる。
二人は口を噤み、それぞれ注文したメニューを受け取る。
晶はカスターを見渡し、カトラリーを取り出すとはなびに手渡した。